Kapilimehana

Kapilimehana







 Kapilimehanaって、いったいどこにいるのかな。
 僕の呼びかけに気づいて(くれたっていいのに)。
 熱い気持ちが心の奥のほうであばれてるみたいなんだ。
 やさしくしてほしいんだけどな……。  

 熱い思いを受け入れてくれる誰かを求めて、思いのたけを叫ぶひとの切羽詰まった感じがビンビン伝わってくる『Kapilimehana』。からだの大切なところで(i ka piko)、燃え上がる欲望みたいなものが(ka 'ano'i wela)、聞き分けのない子どもみたいな状態(he 'eu)になっている(?)なんて訳してみると、気持ちよりもからだのほうが、もうどうしようもなく沸騰している感じもあります。というか、そもそも心とからだって、別々に扱えるものではないかもですね。そう、理性で制御できないところにあるのが恋心なんですから……。

 やさしく肌を刺激する、さわやかな風といったらさ、
 もう僕をいてもたってもいられない気分にさせるんだ。 
 風よ、恋人を連れてきてくれないかなぁ~なんてね。
 僕ら一緒になろうよ(って言いたいじゃない)。 

 「どうか僕をいやしてほしい」(ho*’olu mai ho'i e*)……先のバースでは、そんな一番の願いであろうことも語られましたが、やっぱり、ただひとり吹く風に身をまかせながら、恋人といえるようなだれか(he ipo ala)が風にのってやってこないかなぁなんて気分で悶々としているようです。このあたりの歌詞をたどっていると、特定の誰かを思っているというよりも、恋に恋するように誰かとしかるべき関係(he pono)になることを夢見ているんだろうか……なんて思わせる雰囲気もあります。いずれにせよ、不意に訪れる風が感じさせる不在の気配ほど、ひとりきりの寂しさをつのらせるものはないかもしれません。

 山の高いところの涼しさっていいもんだよね。
 空高く雲がかかってたりして、
 Hinaの月明かりのきらめきをまとって
 (きっと、きみは)夜にこっそりやってくる(って思えるもの)。

 山の高いいただきのあたりに、まるで雲のじゅうたん(ke kapa 'ohu)のようにかかるもや……それは、満たされぬ思いを抱えながら眺めるひとには、自身の晴れぬ思いそのものにみえたりするのかもしれません。それでも、その美しさを眺めていると、いいなぁ(maika'i)って感じで希望が持てたりするんでしょうか。僕のKapilimehanaは、きっとその月明かりの美しさをまとってやってくると……。

 太陽が現れる姿って、なんてすばらしいんだろう。
 静かに燃える炎が、胸の中にふくらんでいくみたいっていうか。
 そう、思いは東の空に立ち現れるもの。
 そうして、大空に永遠のアーチを描くのさ。
 
 闇を照らしはじめる太陽ってなんてすばらしいんだろう……先のバースでは、もやもやした思いで理想のパートナーの姿を追い求めている感じがありましたが、一転して希望の光が立ち昇りはじめたようです。そう、太陽が東の空から昇り、天空にアーチを描くさまを、自らの思いが奮い立つ(ua ala ke aloha)感覚に重ねているわけですね。一番のバースでも、心のなかの炎がめらめらとゆれているようでしたが、ここでは静かに燃えるたいまつが大きくなる(ka wena lamalama ‘olu)とあって、心みだれる不穏な雰囲気はいくぶん解消したようでもあります。なんといって、日の出は世界が日々生まれ変わることを象徴しており、太陽が一番に姿をあらわす東の空(ma ka hikina)は、いわば未来が誕生する場所でもある……そう考えると、Kapilimehanaを求める誰かにとって、なにかこれからを期待させるような状況の変化があったんだろうか!?なんて深読みすることも、あたらずも遠からじかもしれません。

 (大切なひとを)美しくたたえるこの歌は、
 Kapilimehanaに捧げ、その応答を求めるもの。
 まだ(誰も)訪れたことのないその場所で、
 もう一度、こころ穏やかにいい時間を過ごせたらなという思いを込めて……。

 最後のバースでは、「この歌はKapilimehanaに捧げたものです」(no Kapilimehana)としめくくられ、Kapilimehanaからの応答を求めるとともに、「訪れたことのない場所で」(i kahi hele ‘ole ‘ia)*、いい時間を過ごす(e nanea hou)ことを願ってもいるようです。Kapilimehanaに向かって語っているようでもありますが、その一方で、終始ポッカリ空いたこころの穴を埋めるようにことばが重ねられ、特定の誰かに語りかけているようではなかったことを考えると、Kapilimehanaとはある個人を指すのではなく、理想の恋人を象徴することばではないかという気もしてきます。たとえば、温かいこころで(mehana)寄り添ってくれる(ka pili)、そんなパートナーを思い描いて歌われたのではないかと……。そして、ここであらためて思うのが、冒頭の「'o Kapilimehana」に、「Kapilimehanaとは……」みたいな感じで歌のテーマを宣言しているような雰囲気が感じられること。そう、もしあるひとへのメッセージであるなら、「e Kapilimehana」とKapilimehanaへの呼びかけで始まってもよかったはずなんですね。そんなことをあれこれ考えながら、この歌が個人の思いにとどまらないものを感じさせるのは、そのあたりの微妙な表現の違いによるんだろうかと思ったりもする、『Kapilimehana』なのでした。

by Manu Boyd

*:文字通り訳すと「訪れられていないその場所」は、(深読みすると)この誰かにとってもまだ見ぬKapilimehanaの、(たとえば)温かく包んでくれるその胸の中だったりするのではないかと思われます。
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。