Ku'u Pua I Paoakalani




 やさしい風がふわっとただよってきて、
 あっ!と気づいたのです。
 (それはまさしく)私が大切にしているあのお花、
 Paokalaniの丘に咲いているものでした。
 
 さぁっと視界が開けたときの気分を思わせる、さわやかで清々しいメロディが印象的な『Ku'u Pua I Paoakalani』。タイトルにある「Paokalani」は、このmeleの作者、Lili'uokalani女王の私邸があった場所。そして、そこに育つ女王の大切な花(ku'u pua)のことが歌われているわけですが、見慣れているはずのその花たちによって、「ある記憶がよみがえった」(ho'ohāli'ali'a mai)という彼女の思いに寄り添うために、この歌が作られた1895年のハワイ、および女王が置かれた境遇を考えあわせてみたいと思います。
 
 いつもは、Uluhaimalamaの山手に咲く花たちをみているのだけれど、
 Paokalaniのおだやかさで育まれたお花は、ほかにはない格別なものなのです。
  
 ここに登場するUluhaimalamaは、O’ahu島の南側、Pauoaの山手のパンチボールにもほど近い場所で、Lili'uokalani女王が自らの土地を植物園として提供したエリアがある場所。そして、そのUluhaimalamaの丘に育つ花たち(nā pua o ka uka o Uluhaimalama)の美しさをいつもみている('ike mau i ka nani o~)と歌われる背景には、この歌を作ったとき、Uluhaimalamaから届けられる花だけを楽しみに、日々、無為にやり過ごすしかなかったというLili'uokalani女王が置かれた過酷な状況があったりします。どういうことかというと……1895年1月からの8カ月間、新政府に対する謀反を主導した疑いで罪に問われた彼女は、'Iolani宮殿に閉じこめられていたんですね。暫定政府のガードのもと宮殿を訪れるひともなく、届けられるものは、手紙も含めすべて検閲されるという生活を送っていた彼女に、かろうじて許されていたことのひとつが、Honolulu周辺に所有していた土地から花を届けてもらうことでした。そして、それはたいていPauoaのUluhaimalamaのものだったようですが、ある日のバスケットに、Paokalaniにある女王の私邸に育つ花が入っていた……という、そんなちょっとした出来事にこころ動かされて生まれたのがこの歌のようです。囚われの身で家にも帰れず、届けられるお花を包む新聞だけが情報源という、なんともこころ細い日々を過ごしていた女王にとって、その花たちとの再会は、なつかしさに胸がいっぱいになるひとときだったに違いありません……。
 
『Kuʻu Pua I Paoakalani』(Queen Liliʻuokalani)について、zoomオンライン講座で解説しています。アーカイブ(録画)による受講のご案内は、こちらをご覧ください。
http://sukimano.com/blog-entry-650.html

参考文献
1)Gillett DK: The Queen's Songbook-Her Majesty Queen Lili'uokalani. Smith BB ed., pp60-65, 1999
2)Liliuokalani: Hawai’i's story by Hawai’i's queen. Honolulu, Mutual Publishing, pp289-594, 1990
 
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。