Moanalua

Moanalua






 Moanaluaでハンドルがきかなくなった。
 Kahauikiではブレーキもだめになって……。 

 ゆくあてがあるようでないような、気ままな小旅行といった雰囲気がある『Moanalua』。Honoluluを西から東にたどる旅の記録のようですが、なぜかいきなり車の故障からはじまるこの歌。いったい、どんな思いが込められているんでしょうか。

 (それは)Kalihiのひらけた場所だったかな。
 Kaiwi'ulaではまったくいかれちまってたし。

 Kapa*lamaといえば米を育てる水田、
 Keone'ulaにはkiaweの木陰があったりとか……。

 Leleoといえば、池があって、
 Ha'aliliamanuで、ぼくらキスを交わしたっけ。

 Kalihiのひらけた場所から田んぼのあるKapa*lama、kiaweの木陰があるKeone'ula……とたどられますが、乗り物は故障しているようなので、もしかすると、長い道のりを歩いて帰った可能性もあったりするでしょうか。そして、Ha’aliliamanuまできたところで、なぜか「キスをする」(honi)という展開に……というわけで、恋人たちのお出かけだったのかもしれないとも想像されますが、それにしても謎なのが、このあと続く思わぬ展開なんですね。

 Kapu'ukolo、そしてKane*kinaといえば、
 (君は)uluaと木馬に乗ったんだよね。

 木馬(lio la*'au)に乗ったということは、遊園地みたいなところでメリーゴーランドを楽しんだようにも読めます。そして、「Uluaと一緒に」(me ka ulua)と歌われる「ulua」は魚の一種で、人間、とくに女性が男性を呼ぶときに使われることば。というわけで、木馬に乗ったのは男女のペアーのようなのですが、次のバースでは、早くも破局を思わせる内容が語られます。

 Kamanuwaiといえば、小さなニワトリ……。
 鼻を突くにおい(の記憶)、そして君がぼくのせいで傷ついたりとか……。

 (ところで)傷ついた理由ってなんだったのかな?
 Noniの実を無理強いされて……かな。

 あれまぁ、ぼくのお尻が痛いんだけど、
 なんでまたぶらぶらさまよってるんだろう?

 「小さなニワトリ」(moa li'ili'i)とは、もしかすると「ひよこ」のことなのかもしれません。いずれにしても、なんとなく情けないというか弱々しい印象を受けるこのことば。先に女性からみた男性を指すことばとして登場した「ulua」が、古代のハワイで人間の生贄の代わりに捧げられた魚だったことから考えると、これも(女性に対して?)ふがいない男性をたとえているのではないかと思ったりもします。そんな男のダメさ加減が原因だったかどうかまではわかりませんが、君はぼくのせいで傷ついた('eha 'oe ia'u)なんて歌われているところをみると、結局、二人はうまくいかなかったのでしょうか。そして、その理由は「noni」の実だったとされるのですが……苦さを特徴とするそれは、もしかすると、後味の悪い恋の記憶の象徴だったりするのかもしれません。それにしても最大の謎は、最後にお尻が痛いとか、それがまたさまよい始めたことを思わせるフレーズ(pehea la ia e lewa hou ai?)。それでも、こうして歌全体を眺めてみると、所在なげにはじまった道行きは、実は失った恋を反芻するこころ模様だったようにも思えてくる、そんな『Moanalua』なのでした。

参考文献
Elbert SH, Mahoe N: Na* mele o Hawai'i nei-101 Hawaiian songs. Honolulu, University of Hawai'i Press, 1970, pp77-78
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。