Le*’ahi (Diamond Head)

Le*’ahi (Diamond Head)







 Le*’ahi(といえば)
 Kaimana Hilaのこと。
 Ma*mala湾の水面を照らす星のようなものかしら。

 Le*’ahi, ‘uhe’uhene
 Kaimana Hila, ‘uhe’uhene
 Ho*ku* o ka ‘ale kai Ma*mala
 ‘Uhe’uhene

 思わず眠気を誘われそうな昼下がり、ゆったりと時間が流れる海辺の風景をながめながら、夢とうつつの間をいったりきたり……そんな独特の雰囲気に満ちている『Le*’ahi』。「Le*’ahi」といえば、現在はダイヤモンドヘッド(ハワイ語で「Kaimana Hila」)と呼ばれ、O’ahu島を訪れる観光客が必ず目にするといってもいいランドマークのひとつ*。Waiki*ki*の浜辺から、東のほうを見晴らすと視界に入るクレーター状の岬ですが、ここではそのLe*’ahiが「Ma*mala湾を見下ろす星のよう」(ho*ku* o ka ‘ale kai Ma*mala)と歌われていて、Le*’ahiの岬からWaiki*ki*よりもさらに西に広がる風景、海沿いのHonolulu HarborからPearl Harborに至るあたりまでが意識されていることがわかります。

 あなた、気を付けてね。
 (海に浮かぶ)ブイを目印にね。
 サンゴ礁に引っかかって私たち、
 海に投げ出されたりしないように……。

 Ma*lama ‘oe, ‘uhe’uhene
 I ka poe pele, ‘uhe’uhene
 O ili ka*ua i ka pu*ko’a
 ‘Uhe’uhene

 よく知られたブイなのよ。
 河口のところにあって、
 大海原へと誘うように浮いてるの……。

 ‘O ka poe kaulana, ‘uhe’uhene
 Kau i ka nuku, ‘uhe’uhene
 Na*na e ho’owale nei i ka moana
 ‘Uhe’uhene

 船が停泊するハーバーから沖に目を凝らすと、いつもゆったりと浮かんで見えるブイ(ka poe pele)。さぁ、ここまでボートを漕いでおいで……と、まるで手招きするように波に漂うそれは、恋人と二人で過ごす特別な時間を思い起こさせながら、もう一つの世界への入り口を見守っているようです。そんなふうに、ロマンチックに語られるブイのある風景ですが、ブイに「気を付けて」(ma*lama ‘oe)という声かけは、「珊瑚礁にひっかからないように」(o ili ka*ua i ka pu*ko’a)と続き、その海の標識が、海底のサンゴ礁への注意を促すものであることもわかります。そんな感じで、港の風景を背景に、そこで過ごすひとびとの姿が目に浮かぶような描写が続きますが、この歌の作者のパートナーは灯台守だったようなので、海の安全を見守る彼の眼差しでもって海を眺めていたのかもしれない……なんてことを思ったりもします。 

 思いを寄せてほしいわ。
 (まずは)握手とかどうかしら。
 うっとりと見つめ合う恋人同士みたいに……。

 Ha*’awi ke aloha, ‘uhe’uhene
 Lu*lu* lima, ‘uhe’uhene
 Me na* huapala maka onaona
 ‘Uhe’uhene

 新しい恋の予感に胸ふくらませながら、相手の気を引こうとちょっぴり急ぎ足になっている……そんな感じでしょうか。実際に、そんな駆け引きをしているカップルを目にしていたのかどうかはともかく、どんな恋のはじまりにも似合いそうな海辺の風景は、彼女の想像力をかきたてて余りある美しさだったに違いありません。

 Le*’ahiのある風景が思い浮かんだかしら。
 じゃあ、またね、いとしいひと……。

 Ha'ina ‘ia mai, ‘uhe’uhene
 Ana ka puana, ‘uhe’uhene
 Goodbye ka*ua, e ke aloha
 ‘Uhe’uhene

 あれっ、もう帰っちゃうの!?いよいよこれからってとこなのに……なんて気持ちにさせられる結末ですが、あくまでも「ka punana」(歌のテーマ)はLe*’ahiのある風景。美しくそびえるその岬に見守られるMa*mala湾あたりを行き交うひとびとさえ、その舞台セッティングの一部分だったのかもしれません。さぁ、そろそろ日暮れの時刻。もうしばらくしたら、Le*’ahiのあたりも闇に包まれるわ……そんなふうに、いつのまにか陽がかげりはじめた海辺の風景を眺めながら、しばしの別れを惜しんで輝く太陽に向けて、ひそかに心のなかでつぶやいた「Goodbye ka*ua」だったのかもしれません。
 ここまで、私自身の記憶のなかにあるKaimanahilaを思い浮かべたりしながら、歌詞からうかがえる風景をたどってみました。もっとも、この歌が作られたのは1895年で、現在とは相当風景が違っていたことは想像に難くありません。少し時代がくだった1930年頃の写真でも、当時すでにあったAloha Tower(10階立て)が最も高い建物で、ダウンタウンあたりからKaimanahilaまでを、広く見晴らせたであろうことがうかがえます**。一方、この歌が作られた19世紀末といえば、長年にわたるハワイの国家主権をめぐる駆け引きが、いよいよ最終段階にさしかかったころ。1893の王朝転覆、合衆国併合派によるハワイ共和国の設立(1894年)、Lili'uokalani女王の逮捕と幽閉(1895年)と、まさにハワイが主権を維持できるかどうかの瀬戸際にあった時代にあたります。結局、その流れにあらがうひとびとの奮闘のかいなく、1898年には合衆国併合が決まるわけですが、そんな時代背景を考え合わせると、そのただなかで作られた『Le*'ahi』が、まるで凪を思わせる静けさをただよわせていることさえ、つい深読みしたくなってしまうんですね。というのも、Le*'ahiが照らし出すように見守っているMa*mala湾あたりといえば、その山側一帯が、まさに政治的混乱の舞台だったところなわけですから……。もしかすると、そんな不穏な時代の空気に背を向けて、ここではない彼方への思いを募らせながら歌われた、そんな『Le*'ahi』だったのでしょうか。鼻歌まじりに口ずさまれたようなこの歌のかったるさは、暗い時代を生きたひとびとの、深いため息そのものだったのかもしれません。

by Mary Pula’a Robins & John Noble

*: Kaimana Hila のもともとのハワイ語名、「Pu’u Le*’ahi」は「‘ahi」(マグロの一種)の「lae」(額、岬)が語源とされていて、伝説では火の女神Peleの妹のHi’iakaが、Kaua’i島に向かう旅の途中に立ち寄った際に命名したと語られてきました。また、現在のハワイ語名、Kaimana Hilaは、「kaimana」(diamond、ダイヤモンド)の「hila」(hill、丘)をハワイ語読みしたもので、ハワイ語名でありながら実は英語由来の外来語。ハワイにやってきた英国の船乗りたちが、Kaimana Hilaで光る鉱石(方解石)をみつけたときにダイヤモンドと勘違いしたというエピソードから、19世紀はじめに生まれたネーミングのようです。この丘のことを歌った楽曲『Kaimana Hila』については以下参照。
ハワイ語のはなし131 カイマナヒラのみえる風景
http://archives.mag2.com/0001252276/20160716094044000.html
**:Aloha Tower は、1925年にHonolu*lu* Harborのコントロール拠点として立てられたもの。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。