Puamana

Puamana






Dennis Pavao



 Puamana、それはラハイナにある私の大切なお家。
 (そこは)花の香りに満ちて、
 (なにより)愛にあふれる場所でもあって……。

 Puamana
 Ku’u home i Lahaina
 Me na pua ‘ala onaona
 Ku’u home i aloha ‘ia

 Puamanaは、ラハイナにある私の家。花々の香りに包まれ、(家族によって)愛されてきた場所……そんな歌詞ではじまる『Puamana』は、Irmgard Farden Aluliという女性ミュージシャンが、家族とともにくらした家、ラハイナ(マウイ島)にあったPuamanaのことを歌ったものです。
 Farden familyは、Irmgardをはじめ11人の兄弟姉妹全員がミュージシャンとして活躍したという、ハワイでも有数の音楽家の家系。しかも、彼らの才能は半端なものではなかったようで、ウクレレはもとより、それぞれにピアノ、ギター、ベース、バイオリン、フルート、トロンボーン、サックスといった西洋の楽器を複数弾きこなし、ハワイアンだけでなく、なかにはクラッシックやジャズに傾倒するひともいたといいます。なんでも、子どものころから家にはなんだかんだと楽器があって、IrmgardをはじめFarden家の子どもたちは、決して強いられることなく、きわめて自然な仕方で音楽の才能を育んでいったとのこと。彼らの両親は、そうとうインテリジェンスにあふれる人たちだったのかもしれません……。

 その家には、ココナツの茂みがありました。
 そう、見上げるほどに育った木々が、
 ゆうらゆらと、穏やかにゆれていたなと……。

 Ku’u home
 I ka ulu o ka niu
 ‘O ka niu ku kilakila
 Napenape malie

 見上げるようなココナツの木の茂みが、ゆらゆらと風に身をまかせている……ゆったりと連なるメロディともあいまって、おだやかな空気に包まれたハワイの風景が自ずと目に浮かびますが、それらはPuamanaに住む子どもたちが、それぞれに1本ずつ育てていたものだったようです。だとすると、思い思いに風になびくココナツの木は、家族('ohana)がPuamanaでともに暮らした、幸せな子ども時代の象徴といえるのかもしれませんね。そう、ひとりひとりが最大限にその可能性を育むことを可能にした、Puamanaと呼ばれたあの家の思い出そのものでもあるような……。

 すてきなお家。
 それは海のそばにありました。
 月の光が煌々と照らすなか、海のささやきが聞こえもするような……。

 Home nani
 Home i ka ‘ae kai
 Ke konane a ka mahina
 I ke kai hawanawana

 さぁ、もう一度この歌に込めた思いをこころに響かせてみてください。
 私の大切な家、ラハイナにあったその場所は、
 幸せに満ち満ちていたのです。

 Ha’ina
 ‘Ia mai ka puana
 Ku’u home i Lahaina
 I piha me ka hau’oli

 「海のほん近くに」(i ka ‘ae kai)あって、月明かりの夜にかがやく海は、まるでこちらに囁いてくるかのように美しい―そんな歌詞から、なんだか夢を見ているような光景が目に浮かびます。いや、ホントに夢のような日々だったのではないかと思ったりもします。どんな願いだって可能にしてくれると、子どもたちがなんの疑いもなく信じることができた、そんな絶対的な愛情に守られた空間が、Puamanaだったのではないかと……。そして、最後に、ラハイナの家は「i piha me ka hau’oli」(幸せに満ちて)とも歌われます。お天気のいい日には、きっとみんなで庭に出て、それぞれに楽器を手にホームパーティを楽しむ、そんな家族の日々があったのではないかと想像しています。
 Irmgardとその‘ohanaのメンバーたちは、大人になってからも月に一度は楽器や自分で作った曲を持ちより、セッションするなどして親交を深めていたようです。両親がいなくなり、Puamanaの家もなくなってしまったけれど、音楽こそがわれわれ家族の絆……といったところでしょうか。そんな彼らのあとをうけて、その後今日にいたるまで、彼らの子孫は3世代、4世代にわたって音楽家として活躍することになります。そうして失われた家族の思い出とともに歌い継がれ、多くのひとびとに愛されてもきた『Puamana』。シンプルなメロディにのせて歌われる、もの足りないくらいにことば数の少ないそれは、それでも、というかだからこそ、多くのハワイのひとびとが、それぞれにある郷愁でもって口ずさむことができる、そんな歌なのかもしれません。


参考文献
Kanaheke: Hawaiin Music And Musicians-An Ilustrated History. The University Press Of Hawaii, 1979




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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。