Nani wale no* na* wailele ‘uka ‘O Hina ‘o Ha*ha* ‘o Mo’oloa Na* wai ‘ekolu i ka uluwehiwehi ‘O Kamalo* i ka ma*lie
二つ目のバースには、Moloka‘i島の滝の名が挙げられ、それらが「生い茂る緑に囲まれている」(i ka uluwehiwehi)と描写されています。滝のある風景の美しさはもちろんのこと、その豊かな水流のおかげでうるおう大地のみずみずしさが想像されますが、滝の名に女神を連想させるものが含まれていたりするあたり**、命の源としての水が意識されているのかもしれないと思ったりします。 このバースに登場するKamalo*は、島の東部から南側の海沿いを西向きにたどると、島中央に至る手前にあるまち。一方、1番で語られたHonouliwaiは、ちょうど島の北東から南に下った海沿い、つまりKamalo*に至る手前にあるまちで、空港に向かうMoloka‘i最後のドライブが語られていることがうかがえます。そして、その道中で思いがけず出合ったのが、霧が晴れた山肌に連なる滝の風景なわけですが、Kamakahiが思わず車を止めたとき、ほかのドライバー達も同じように山側を見上げていたといい、地元のひとたちも、こんな光景は見たことがないと驚いていたようです。まるで風景が生き物のように感じられる、ダイナミックな自然環境が想像されますが、そうして刻々と変化し続けるのが大自然本来の姿であり、そんな生命に満ち溢れた世界に出合えるのが、Hawai’iのすばらしさなのかもしれません。
Nani wale no* ka ‘a*ina Ha*lawa Home ho’okipa a ka malihini ‘A*ina uluwehi i ka noe ahiahi Ua lawe mai ka makani Ho’olua
ここに登場するHa*lawaは、Moloka’i島の最東端に位置するまち。そこが「旅人が訪れる家(のような場所)」(home ho’okipa a ka malihini)とされることから、Kamakahiが訪ねた彼のいとこの家が、そこにあったのではないかと考えられます。ちなみに、西側から南の海沿いをたどる道路は、島の北東にあるこのHa*lawa渓谷が行き止まり。その先には、Moloka'i島の聖地、Lanika*ula伝説でも知られるkukuiの林があったりするのですが、車ではこの林を越えて島の北側に行くことはできないようです。そんな、O’ahuでは考えられないMoloka'i島の暮らしは、Kamakahiにとっても新鮮に感じられることが多かったのではないか……なんてことを思うにつけ、しっとりと夜露にぬれはじめ(i ka noe ahiahi)、ここちよい風が吹く夕暮れ時のゆったりした気分が、「緑生い茂る大地」(‘a*ina uluwehi)を背景にしっかりと脳裏に刻まれた、そんな特別なMoloka'iの旅だったのではないかと想像されます***。 山が自分に向かって歌いかけている……作者であるKamakahiは、滝をみながらたたずんだその場所で、その山からメロディが聞こえてくるように感じたといい、そんな経験は、後にも先にもなかったと語っているようです。そして、その得もいれぬ美しい風景を「wahine」(女性)と表現したのは、山である彼女が、自分がいとしく思うひとに対して、精いっぱいその美しさを見せていると感じたからでもあるといいます。ダイナミックな風景に圧倒されながら、それとの豊かな対話のもとでことばが紡がれたことがうかがえるとともに、大地に女性的なものを見出し神になぞらえるこのまなざしが、古来のハワイの信仰に広くみられるものでもあることに驚かされる『Wa*hine ‘Ilikea』****。風景を語り、それとの交流のなかで生まれるのがハワイの神々であることを、あらためて考えさせられた一曲でした。
参考文献 1)Kanahele GS: Hawaiian music & Musicians-an encyclopedic history. Honolulu, Mutual Publishing, 2012, pp866-867 2)McMahon R: Adventuring in Hawai'i. Honolulu, University of Hawaii Press, 2003, pp191-215 3)Beckwith M: Hawaiian mythology. Honolulu, University of Hawaii Press, 1970, pp2-30, pp110-111, pp217-219
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