「E ka mō'ī」(王さま!)と呼びかけられる、誇り高き(hanohano)ひとに対するあふれんばかりの思いが、ある種の懐かしさをともなって高らかに歌い上げられる『Aloha Nō Kalākaua』。Kalākaua(1836-1891)といえば、1810年のKamehameha一世によるハワイ統一からはじまったハワイ王朝末期に、選ばれて7代目の王となったひと(在位は1874-1891)。おもに米国からやってきた宣教師たちをアドバイザーに、西洋近代の社会制度にならった統治を確立しようとしたハワイ王朝ですが、Kalākaua王の時代には、もともと王族に重用されて政治力を持った米国の宣教師たちが、子孫たちの代になってその多くが王族に対する思い入れを失っていたころ。なかには企業家として、経済のみならず政治的な力を発揮する者も登場し、合衆国併合をもくろむ政治的なかけひきが行われるようになってもいました。そんな時代状況にあって、併合派の後ろ盾のもと、選挙で王になったのがKalākaua王でした。一方、伝統的なハワイの暮らしが失われるなか、苦しい生活を強いられていたネイティブのひとびとに支持されたのが、Kamehameha一世の血筋を受け継ぎ、王位継承者と目されていたEmmma女王。Kalākauaが王位を獲得した直後には、Emmma派による暴動も起きていることを考えると、「ハワイの多くのひとびとによって」(eka lehulehu o Hawai'i)とハワイ語で歌われるのはちょっと不思議な気もしますが、それでも「Kalākauaは愛すべき王」(Aloha nō Kalākaua)であるそのわけが、次のバース以降で語られていきます……。
参考文献 1)Silva NK: Aloha Betrayed-native Hawaiian resistance to American colonialism. Durham, Duke University Press, 2004, pp87-122
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