晴れやかなメロディライン、そして伸びやかに響くコーラスから、そこに語られる思いを抱きしめるひとの、誇らしくも幸せな気分が伝わってくる『Ka Lehua A'o Waimea』。「おだやかな(空気に包まれている)」と歌われるその場所は、Kaua’i島南西部はWaimeaの、山手のほうにある森のなか(ka nahle o ka uka)。そこでしっとりと雨にぬれながら出迎えてくれたlehuaの花は、口づけを交わすときのように、うっとりまどろんでいるように見えたのでしょうか……雨のしずくをまとったlehuaというと、もうそれだけで切ない恋にまつわる情感が込み上げてきます。作者であるPono Murrayが、パートナーと一緒に森に出かけた思い出を歌にしたことを考え合わせると、さらっと通り過ぎてしまいそうなこのlehuaの描写も、このあとに続く愛の物語のプレリュードだったりするかもしれません。
Lele ana e* na* manu i ka malu 'ohi'a Kui lei no* ka*ua i ka ua noe anuhea
Lehuaの美しさに見とれていると、その木の茂みから突然、飛び立っていく鳥たちがいてハットさせられる……しんと静まりかえった森の空気が一瞬ゆらいで、風景が別の仕方でみえはじめた、そんなワンシーンが目に浮かぶようです。誰もいない森で二人きりだと思っていたら、一心に花の蜜を吸う鳥たちも、そこでlehuaとの愛のひとときを楽しんでいたんですね。ならば、さぁぼくらも、leiをつなげるように愛をつむごう(kui lei no* ka*ua)……。心地よい驟雨に包まれながらその地にたどりついた二人は、まるで運命に導かれるように、愛の行為(kui)に誘われるのです。
'Upu a'e ke aloha, ku'u lei hali'a Ka pilina i ka ua, e pili ho'i ka*ua
記憶の奥深くにあるこころの引き出しから、不意によみがえってくる感覚('upu a'e ke aloha)。そのこころのざわめきは、ときおり夢のようにわき上がっては、leiのように幸せの円環を描く(ku'u lei hali'a)……。このバースには、愛の思い出を反芻する作者のこころ模様がストレートに語られている、そんな雰囲気があります。そして、Cody Pueo Pataがアルバムに収めているバージョンでも、この部分だけは作者であるPono Murrayが歌い、自らの声にコーラスを重ねています。そうして、祝福の雨のなか結ばれた二人の絆(ka pilina i ka ua)は、特別な思い入れでもって歌い上げられるわけですね。
Puana mai ke aloha no ka nahele o ka uka I laila i ka la'i ka lehua a'o Waimea
そう、この愛は「山手の森で生まれた」(no ka nahele o ka uka)……鳥たちがつどい、lehuaが咲き誇るWaimeaの奥地。二人きりで対峙したその場所がおだやかな空気に包まれていたのは(i laila i ka la'i)、Kaua’iの森という神的なものが住まう空間で、人間が自らを超える存在との境目を意識せざるを得ない、そんな彼方の世界への入り口をそこに感じたからかもしれません。そうして、そこで深く刻まれた記憶がよみがえるたびにあふれ出す、愛する思い……。夢とうつつの間をたゆたうことでしか確かめられないもの、それこそがが、かたちを持たない「ke aloha」の正体なのかもしれません。
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