Waimea I Ka La'i

Waimea I Ka La'i






https://www.youtube.com/watch?v=pl19FPp1MOE



 いとおしくて仕方ない(そのすべてが)、
 Uhiwaiの雨に祝福され、
 私もその恵みを受けながら、
 そのふんわりした気配を(肌で)感じている。

 Ho’oheno nei ke aloha
 No ka ua uhiwai
 Ho’oma’u* ‘ia no mi* nei
 E hani mai, e hani mai

 あたり一面をおおう霧に包まれながら感じたインスピレーションのままに、込み上げてきた思いが一気に歌い上げられている……そんな雰囲気がある『Waimea I Ka La'i』。Uhiwaiの雨に祝福され(no ka ua uhiwai)、大切に思っていると歌われるWaimeaは、Hawai’i島北部、North Kohalaに位置する渓谷に囲まれた地域。Uhiwaiは、そのWaimeaの地によくみられる深い霧のことで*、「e hani mai, e hani mai」と繰り返されるところは、Waimeaの土地をうるおすその霧の感触を確かめながら、きたるべきなにものかを待ち受けているような感じがあります。

 私が(その光景を)初めて見たのは、
 夜明けが訪れようとするときだった。
 Mauna Keaを美しく飾ったのは、
 そうあなた、(uhiwaiの)雨のおかげね。
 (そうして)Waimeaは静けさに包まれていた。

 Akahi ho'i au a ‘ike
 A hiki mai ka wana'ao
 Ho’ohiwahiwa ia* Mauna Kea
 Na*u, no ‘oe
 Waimea i ka la’i e

 いままさに夜明けが訪れようとするそのとき、「はじめて目にした」(akahi ho'i au a ‘ike)と歌われるのは、Mauna Keaが美しく飾られる光景だった……。Mauna Keaといえば、Waimeaから南東方向に見える4千メートル超の山。その山の端(は)からちょうど太陽が現れようとするその瞬間に、それまで見たことのないようなその表情と対面したわけですね。そして、思わずこころ揺さぶられた風景を作り上げていたのは、「あなたによって」(na*u)とやや強い仕方で語られるuhiwaiの霧。そうしてWaimeaは、おだやかで平和そのものといった雰囲気に包まれていた(Waimea i ka la’i)とされることからすると、まっすぐに放たれる朝陽を受けたのではなく、霧によって空間を均等に満たす白い光に包まれて、どこか別の世界にいざなわれたような、不思議な気分にひたってしまった、そんなひとときだったのではないかと想像されます。

 雨にぬれながら敬虔な気持ちに満たされる。
 Mamoの羽のleiがその恩恵を受ける(ような気分で)。
 (Waimeaの)美しさははてしなく、
 霧が森を(くまなく包むように)広がっていく。
 
 Pulu'elo i ka ‘ilihia
 Pulupe* ka lei hulu mamo
 Palena ‘ole kou nani
 Ka noe ha*li’i i ka na*hele

 このバースでは、あまりに美しいものを目にしたり、神々しいものに出合ってことばを失ってしまうときの精神状態をあらわす「‘ilihia」が用いられています。雨にぬれながら、なにか自分を超えた大きな存在に圧倒されたその経験が、あまりに非日常的なものであったことがうかがえますが、鳥の羽のlei(ka lei hulu mamo)が雨に打たれる状況にたとえられているのは、(鳥の羽のleiに象徴される)自分を誇らしく思うような心もちがことごとく打ち砕かれ、ただただ頭(こうべ)を垂れるしかない、そんな気持ちではないかと思われます。さらに、「森の中に霧が広がっていく」(ka noe ha*li’i ka na*hele)というなにげないフレーズについても、みわたすかぎり人工物にさえぎられることのない霧の情景をイメージしてみると、それと対峙するときの気分が想像できるかもしれません。そう、人間が究極的にはそのありように身をゆだねるしかない〈自然〉は、限りなく神の領域に近いものなんですね。

 このmeleに込めた思いを届けるべく、
 (いまこそ)私は心が求めるままに歌おうと思う。
 私たちが再び出合うことを夢見ながら。
 そう、あなたと私が……。
 あのおだやかなWaimeaの地で。

 Puana ‘ia mele
 E aloha a'e ana no wau
 E ho’i mai no ka*ua la e pili
 O ‘oe a ‘o wau
 Waimea i ka la’i e

 「私とあなたが」(o ‘oe a ‘o wau)、「あのWaimeaの地でまた出合い、ともに過ごすことがありますように」(e ho’i mai no ka*ua la e pili)……この最後のバースは、誰か特定の人物(’oe)との関係を語っているようにも読めますが、ここに至るまでの内容に即して、あり得ない仕方で対面したMauna Keaの姿、あるいはそれを作り上げたuhiwaiに対して語りかけているのではないかと解釈してみました。また、この曲が収められているCDのライナーノーツには、作者であるNatalieさんのコメントとして、「私の思い出のなかに、家族とともにWaimeaで過ごした幸せな時間が満ちていて、いつかあのときを取り戻したいと思ってしまう」と記されてもいます。そんな、おだやかに過ぎた家族の日々への思いが、奇跡のようなひとときの空気感とともに表現されている『Waimea I Ka La'i』。豊かな自然の表情と、それを受け止めるひとの感受性なしには決して生まれ得ない、宝石のような輝きに満ちたmeleでした。

by Natalie Ai Kamauu

*:Uhiwaiは、「wai(水)」で「uhi(覆う)」ということば通り、空間をすっぽり覆う霧をあらわすことば。
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コメント

yayorin

Mahalo
スッキリしました。この歌の世界観が明白になりました。マウナケアとウヒヴァイと。ワイメアに行ったことがないのですが、私の頭の中にはワイメアのイメージがきざまれました。有難うございました。

隙間のりりー

yayorinさま
しっかり読んでくださって、ありがとうございます。壮大な風景がイメージされるメレで、ナタリーさんの歌声にもぴったりですね。
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。