Tuahine

Tuahine






https://www.youtube.com/watch?v=5sF7SCVQGAM


 Wa'ahilaの峰が雲をいただいて、
 山手のもやが美しく(見え始めたら)、
 タロが水と出合う(あの始まりの)ときを思わずにはいられない。
 (さぁ、いまこそ)こころのより所、Tuahineへ(向けて歌おう)。

 'Ohu'ohu 'o Wa'ahila i ka noe la*
 Noenoe o uka i kou nani
 He wai 'apo liliko i ku'u poli
 Ku'u poli e Tuahine

 なによりも尊く、美しさに満ちた存在、
 それこそがあなた、Tuahineなのです。

 'O ka 'oi 'o ka nani
 No* 'oe e Tuahine

 雲をいただく山並みを見上げながら、なにものかの到来を待ち受けているときの、特別なこころもちを思わせる『Tuahine』。「雲をいただいて」('ohu'ohu)と歌われるWa'ahilaは、O'ahu島の南東部、Kona地域の山手にあるエリア。ちょうどWaiki*ki*あたりの山側、Ma*noaとPa*loloの峰の間に位置する地域です。そこに雲がかかり、雨の気配がただよい始めると、なぜか思い起こされる「水にぬれたタロの新芽」(he wai 'apo liliko)。あまりのイメージの飛躍にまずは驚かされますが、タロが最初に水にぬれるとき、といえば……そう、いわゆる田植えにあたるものですね。古代のタロ栽培は、そのプロセスの要所ごとに豊作を願う儀式をともなったとされますが、この「he wai 'apo」も、そういった特別な場面と結びついたことばのようです。そして、収穫の善し悪しを左右するのは、なんといっても適度な降雨量。Ma*noaに降る雨ということで、詩的に「Tuahine」と語られ呼びかけられていますが*、その根底には、あらゆる命の源である雨への感謝の気持ちと、人間の力のおよばない自然に対する、深い洞察があるのではないかと思われます。

 あなたはMa*noaの美しさのうちにあって、
 まさにこの大地を飾るもの。
 (だから)タロに水が与えられる(あの始まりの)ときを思わずにはいられない。
 (そんな)こころのより所、Tuahineへ(向けて、私は歌うのです)。

 'O 'oe i ka nani o Ma*noa
 He 'ohu ho'i 'oe no ka 'a*ina
 He wai 'apo liliko i ku'u poli
 Ku'u poli e Tuahine

 なによりも尊く、美しさに満ちた存在、
 それこそがあなた、Tuahineなのです。

 'O ka 'oi 'o ka nani
 No* 'oe e Tuahine

 (かけがえのない恵みをもたらす)Tuahineに(この歌を捧げます)。

 E Tuahine

 「Ma*noaの美しさのうちにあり」(i ka nani o Ma*noa)、大地を飾るのは「あなたにほかならない」(he 'ohu ho'i 'oe)とたたえられる「Tuahine」。古代ハワイの物語空間では、TuahineといえばMa*noaに降る雨であり、そのパートナーであるKahaukani**との間に授かった娘が、Kahalaopunaであるとされます。大切に育てられながらも、その美しさゆえに不幸な運命にみまわれ、命を落としてしまうKahalaopuna。そんな娘の不憫さを思い涙する母が、Ma*noaの地に雨を降らせると語るそのストーリーは、Ma*noaの美しさ、すなわち自然を雲や霧で飾るTuahineをたたえるこの歌の世界観と、みごとに呼応しています。
 さらに、このバースにも登場する「he wai 'apo liliko」(水にぬれたタロの新芽)で語られるタロの命のはじまりについてイメージを膨らませるために参照したいのが、はじまりの人間について語られるハワイの創世神話、『Kumulipo』の一節。そこでは、天であるWakeaが雨を降らせ、大地であるPapaがうるおされたことで、タロのHa*loa(文字通りの意味は「タロの長い茎」)が誕生したとされます。そして、タロのHa*loaのきょうだいとして後に続くのが、同じくHa*loaの名で呼ばれるはじまりの人間。ここには、人間も含めた自然界の生命の源としての雨が、ハワイ的な原初のイメージで登場しているわけですが、このあたりをふまえると、やや唐突感のある「he wai 'apo liliko」(水にぬれたタロの新芽)も、Tuahineの物語空間と地続きのところにあることがわかります。
 照りつける太陽が雲を育て、ひとしきり雨を降らせたと思ったら、再び顔をのぞかせた太陽が虹を輝かせる……そんな自然の営みが、日常として身近に感じられるHawai'iの島々。そんな環境あってこそと思われるHawai'i的な語りの文化が、神話の世界のみならず、ポピュラーミュージックにも息づいていることになにより驚かされる『Tuahine』。雨や風といった自然現象を、古代からさまざまに名付けてきたハワイ的感性の原点にふれた気がする一曲でした。

by Barry Flanagan


*:Tuahineが登場するKahalaopunaにまつわる伝説について。
『Lei Ana 'O Ma*noa I Ka Nani O Na* Pua』 http://hiroesogo.blog.fc2.com/blog-entry-349.html
**:KahaukaniはMa*noaに吹く風の名前。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。