Nani Ka’ala

Nani Ka’ala




https://www.youtube.com/watch?v=HcXk687G7l4


 Ka’alaって美しい。
 そう、あなたはうるわしい山。

 He nani Ka’ala, lae, la lae lae
 Kuahiwi nani ‘oe, lae, la lae lae

 軽快なメロディラインと「lae, la lae lae」の繰り返しが、明るい未来への期待に胸ふくらませるひとの、絶好調な気分を思わせる『Nani Ka’ala』。Ka’alaといえば、1,200メートルを超えるO’ahu島の最高峰。島の北西部、WaianaeやMa*kahaあたりを見下ろす位置にそびえる山。その立派な印象は、ここに語られる通り誰もが認めるところだと思われますが、あらためてその美しい姿をほれぼれと見晴らしながら、ハワイのひとびとは、いったいどんなことを思いめぐらせてきたのでしょうか。

 私、Nu’uanuに向かったの。
 Ko’olauの風(を受けながら)。

 I Nu’uanu au, lae, la lae lae
 Ka makani Ko’olau, lae, la lae lae

 Ka’alaに続いて歌われる「Nu'uanu」(文字通りの意味は「山などの高くて涼しい場所」)は、ハワイの島々にみられる一般的な地名ですが、ここではO’ahu島の南東部、Honolu*lu*のダウンタウンあたりから北東方向に続く山が歌われているようです。Ka’alaからだと島のちょうど反対側に位置するNu’uanuですが、その尾根にそってHonoluluからKailua側へ抜ける峠が、見晴らしがいいことで知られるNu’uanu Pali(Nu'uanu look out)。島の風上側(ko’olau)との境目で、強い風が吹くことでも有名なエリアです。Nu'uanuといえば「ka makani Ko’olau」(Ko’olauの風)と歌われるのは、まさにこのNu'uanu を越えようとする際のところ、向かい風を受けるあたりが意識されているからではないかと考えられます。そんな風の抵抗をものともせず向かった彼の地で、この誰かを待ち受けていたのはいったいなんだったのか……。そんなドラマチックな展開を予感させながら、次のバースでは、Nu'uanuの東側の地域がひとつずつたどられていきます。

 私、Kailuaに向かったの。
 (そこで)uluaのお魚をゲットしたのよ。

 I Kailua au, lae, la lae lae
 Huki mai ka ulua, lae, la lae lae

 Uluaは長年、ハワイで食用にされてきた魚で、成長すると1.5メートル、45キログラムにも達するという、スズキ目アジ科の大型魚。古代には、儀式の際に人間に見立てて生贄として捧げられたといい、そんな経緯からかどうかはわかりませんが、uluaは比喩的に恋人の意味で用いられることばでもあります。だとするとKailuaへ行ったのは、いいひといないかしら?みたいなノリだった可能性もありそうです。そう考えると、先のバースの山越えも、あるものを得ようとするひとが、なんとしても乗り越えなければならないなにか(?)のたとえだったのかもしれません……。

 私、Kane’oheに行ったの。
 (そこで出会ったのは)’oheみたいな男だったわ。

 I Kane’ohe au, lae, la lae lae
 I ka ‘ohe kaulana, lae, la lae lae

 Kane’oheは、先のKailuaの西隣のまち。Kane’oheの文字通りの意味は「’oheのような男(のパートナー)」で、’ohe(竹)は古代ハワイではナイフとして用いられたことから、「ナイフみたいにひどい旦那」みたいな意味もあるようです。ということは、思い通りのひとに出会えなかった(?)ということなんでしょうか……。

 私、He’eiaに行ったの。
 (そこで)さぁいよいよ恋人が(見つかるかなって)。

 I He’eia au, lae, la lae lae
 Eia a’e ke aloha, lae, la lae lae

 He’eiaはKailuaの北隣のまち。「Eia a’e~」(さぁ、どうだ!)みたいな感じで勢い込んでいますが、いいひと(ke aloha)には出会えたんでしょうか。

 私、Waia*holeへ行くったのだけど。
 (なによ)じれったいひとね(って感じで終わったわ)。

 I Waia*hole au, lae, la lae lae
 He kanaka pi*hole, lae, la lae lae

 Waia*holeは、He’eiaをさらに北に向かったあたりにあるまち。この地名に含まれる「a*hole」はa*holeの種の成魚のことで、「hole」(はがす)からの類推から、悪霊を祓う儀式やときに恋愛祈願にも用いられた魚なんだとか。先の「ulua」が恋人だったことも考えあわせると、Waia*holeにも探し求めるパートナーのことが暗示されているのかもしれません。で、結果はというと、「じれったいひと」(he kanaka pi*hole)なので、どうも期待外れだったようです。

 私、Waika*neに行ったの。
 (そこで)働き者の男(に出会ったわ)。

 I Waika*ne au, lae, la lae lae
 He kane hana nui, lae, la lae lae

 Waika*neは、先に歌われたWaia*holeもそこに含まれるまち。Waika*neといえばその古代の名は「Wai-a-ka*ne」(Ka*neの水)で、あらゆる生命の源である水の循環についての深い洞察が表現された、Ka*neにまつわる伝説のキーワードでもあります。というわけで、命にまつわる神話的なイメージも感じられるのですが、どうもこのバースの一番のメッセージは、「よく働く男(が最高よね)」みたいな、現実的なノリのよさにあるようです。

 この歌はKa’alaの山のことを語ったもの。
 そう、あなたはうるわしい山。

 Ha’ina Ka’ala, lae, la lae lae
 Kuahiwi nani ‘oe, lae, la lae lae

 そう、Ka’alaの山はすばらしい……いくつもの土地を訪ね歩く旅は、どうも理想の男性を探し求める道行きのようでしたが、ここであらためて、Ka’alaにたとえられているのはなんなのか?を考えてみたいと思います。まず冒頭に、歌のテーマであるKa’alaが登場しますが、2番以降は旅する「au」(私)にスポットがあたっており、旅とともに私の関心がKa’alaから別の場所に移ったのだとしても、なんとなく「で、Ka’alaはどうしたの?」という印象を受けます。もっといえば、いきなり旅をはじめる「au」(私)は誰なのか?という問題もありますね。その一方で、やはりこのmeleの主人公はKa’ala。だとすると、「au」(私)とはつまりKa’alaである可能性は、おおいにあると考えられます。そう、誰かいいひといないかしら?みたいな感じで、Ka’alaの山の精霊みたいなものがいきなり島を横断しはじめ、Ko’olau山脈を越えてしまった……。かなり不思議なストーリー展開ですが、形をもたない精霊であれば、Ka’alaと位置的には決して近くない地域をさ迷うことも十分あり得ます。また、山といえば、なにより「papa」(大地)であり、火の女神Peleがその代表であるように、比喩的には女性にたとえられる存在でもあります。しかも、ハワイ語の「kaala」には、独身者という意味もある……。そんなふうに思いめぐらせてみると、ハワイのネイティブにしかわからない、自然に向けられる独特の感受性がベースになっていることがわかってくる『Nani Ka’ala』。「まぁ働き者だったらよしとしようか」みたいな軽いノリも含めて、ハワイ的なユーモアがほのかに感じられる、楽しいmeleでした。

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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。