Ki*pahulu

Ki*pahulu






https://www.youtube.com/watch?v=W1y4gtfP9m8


 なんて美しい山、Ki*pahulu。
 この大地に抱くあふれる思いは
 決して尽きることはない。

 Kuahiwi nani ‘oe
 E Ki*pahulu
 Ka ‘i’ini pau ‘ole
 A ka makemake

 高みへと続く美しい空間を見晴らしながら、その彼方にひきつけられる思いのままに響く歌声が、遠く山のいただきにまで届きそうに思われる『Ki*pahulu』。Ki*pahuluは、ヒョウタンのようにくびれたMaui島の東のエリアにあり、そのなかほどにそびえる島の最高峰Haleakala*(3,055メートル)の南東側に位置する地域*。急勾配の山頂から海に至る渓谷で、沿岸部には4キロメートルほどの扇状地が形成され、広々と平らな印象の空間が続いています。歌の冒頭では、そんな雄大さと開放感に満ちた風景を見わたしたときの気分が、「尽きることのないあこがれ」(ka ‘i’ini pau ‘ole)であると表現され、次のバース以降、その地にある特徴的な風物が語られていきます。

 (潮の)香りが風に運ばれてきて、
 波のしぶき(を感じさせる)。
 (そうして)Lipoaの海藻が生い茂る海(を思うのです)。

 E moani ke ‘ala
 Ka ‘ehukai
 Ka ulu lipoa
 I ka moana

 Ki*pahuluの海沿いは、静かな砂浜というよりも、切り立った岩肌が絶えず波に洗われしぶきを上げているような環境にあります。それに加えて、この地域の風は海岸線に沿って吹くという特徴があり、うねるような波と潮を巻き上げる風によって、まさに「(潮の)香りが風に運ばれ、波頭(が砕けもする)」(e moani ke ‘ala ka ‘ehukai)、海のめぐみ(ka ulu lipoa、生い茂る海藻)が身近に感じられる空間が広がっているようです。

 多くのひとがこころからくつろいで、
 温かくもてなされる家のような、
 旅人たちが訪れ(迎えられもする、そんな場所なのです)。

 E nanea ho'i kau
 Ka lehulehu
 Hale kipa ho'okipa
 E na* malihini

 Ki*pahuluは、古代にはその豊かな自然環境をベースとする集落の暮らしが営まれた場所**。ただし、19世紀はじめ以降、ハワイ古来の政治経済のありかたが変化しはじめてからは、経済活動の中心が西のLahainaへ移り、やがて土地の大部分は大規模な牧場経営者の手にわたったようです。そうして、かつては数千人が暮らした地域にも、現在は数家族が暮らすだけといいます。そんな状況を思うと、「(旅人たちが)温かくもてなされる家のような場所」(hale kipa ho'okipa)という描写はちょっと意外な印象もあります。もしかすると、訪れたひとをなにより和ませてくれたのは、来るものを拒まずなにもかも包み込んでくれる、ありのままの自然だったのかもしれません。

 いわずと知れたNu'uanuの山がそびえるその姿。
 その山頂は本当にすばらしく、(いつも)静けさとおだやかな空気に包まれている。

 Kaulana mai nei
 O Nu’uanu
 Maika’i o ka ni’o
 ‘A*ina i ka la’i

 Haleakala*に続くKi*pahulu渓谷の標高は、高いところ(ka ni’o)だと2,000メートル超。そのあたりまで行くとさすがに気温も低く、生息する動植物も低地とは異なるはずですが、ここではそんな「Nu’uanu」(高くて涼しい場所)のことが「maika’i」(すばらしい)と歌われ、「おだやかな空気に包まれたところ」であると語られます。自然を思う存分楽しみたいひとには、それこそ「ka ‘i’ini」(あこがれ)の対象だと思われますが、けわしく距離もあってアクセスが容易ではないことが幸いし、いまでも希少な花に鳥たちが集うような、ハワイの固有種の宝庫でもあるようです。

 Ki*pahuluを目にした感動が伝わったでしょうか。
 あの大地に抱くあふれる思いは
 決して尽きることはない。

 Puana ka ‘ikena
 O Ki*pahulu
 Ka ‘i’ini pau ‘ole
 A ke makemake

 とにかく、もうその場に自分がいるだけでありがたく、なぜかひとを敬虔な気持ちにさせる風景に出合った感動が、飾らないことばで語られている『Ki*pahulu』。そんな、この世であってこの世でないような場に身を置くことを夢見て、ひとは旅するものなのかもしれません。

by Ho*ku*lani Rasmussen

*:Haleakala*の南東側には、南からKaupo*とそれに続く大きさのKi*pahulu、やや小ぶりのWaiho’iと大きな三つの渓谷が連なり、その北側にHa*naのまちがあります。
**:Ki*pahuluの地は、古代にはその豊かさが災いし、武力行使をともなう政争に巻き込まれることも多かったようです。またHawai’i島からは50kmと距離が近く、Kamehameha一世がMauiを攻めたときには、まずこの地域に上陸してheiau(祭事を行う施設)を立てたとされます。

参考文献
1)Kyselka Will, Lanterman R: Maui-How It Came To Be. Honolulu, University of Hawaii Press, 1980, pp110-112
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。