Nani wale no* Hilo I ka ua Kanilehua Mehe mea ala e ‘i* mai ana Eia iho a hiki mai.
by Joseph K. ‘Ae’a
Lehuaが生い茂る風景(ka uluwehiwehi o ka lehua)やKanilehuaの雨、Ki*laueaに吹く涼しい風をあらわすPu’ulenaといった、Hiloならではの自然をたどりながら、まちのすばらしさが高らかに歌い上げられる『Hilo March』。Hiloの風物詩の連なりの最後に、「さぁ、いよいよ(女王陛下の)到着!」(eia iho a hiki mai)と締めくくられるのは、この楽曲がLili’uokalani女王がRoyal Hawaiian Band とともにHiloを公式訪問するのにあわせて作られたため*。こころ躍るような晴れやかさに満ちたこの作品の雰囲気は、女王の訪問にわき立つHiloの雰囲気そのものだったかもしれません。 Royal Hawaiian Bandは、Lili’uokalani女王とともに、1881年と1886年の2回、Hiloを訪れています。そのため、いずれの年に『Hilo March』が作られたのかについては判然としないところもあるようですが**、女王の手記でも述べられている通り、彼女が訪れた1881年のHiloが、まさに非常事態のさなかにあったことだけは確かなようです。 Tuberoseやバーベナの葉の香りにたとえられ、「夜を思わせる艶やかな空気感がある」(he moani ‘a’ala i ke ano ahiahi)と歌われるHiloですが、Lili’uokalani女王がHiloを訪れた1881年は、そんなおだやかさとはほど遠い状況にありました。というのも、前年の11月に始まったMauna Loaからの大量の溶岩流が9カ月も流れ続けるなか、よりによって一番大きな流れがHiloのまちに向かい、被害をおよぼすに至ったからです。まちを守るべくバリケードを築き、溶岩流を阻止しようとする試みもあったほど危険な状況だったとされ、Hawai’i島に暮らすひとびとの生活が、つねに危険と隣あわせにあることがうかがわれます。陽気なマーチの調べからは想像できないHiloの一側面ですが、このギャップのところに、燃え続ける島の雄大さや自然の美しさを誇りに思うひとびとの、素朴な心意気が表現されているような気がする、そんな『Hilo March』なのでした。
1)Elbert SH ed: Na Mele O Hawai'i Nei-101 Hawaiian Songs. Honolulu, Univ of Hawaii Press, 1970, pp50-51 2)Kanahele GS, Berger G ed: Hawaiian Music and Musicians-An Encyclopedic History. Honolulu, Mutual Publishing Company, 2012, pp294-295 3)Queen Liliuokalani: Hawaii's Story by Hawaii's Queen. Honolulu, Mutual Publishing Company, 1991, pp69-74
*:この楽曲を作ったJoseph K.'Ae’aは、Lili’uokalani女王に同行したRoyal Hawaiian Band のメンバーで、女王の友人でもあったとされます。 **:文献1)では1881年とされていますが、文献2)では後年の検証で1886年であることがわかったという説が紹介されています。
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