He Hawai’i Au

He Hawai’i Au




 Ho’okena





 Palolo

  「私はハワイ人です」というタイトル通り、『He Hawai’i Au』には、自分がハワイ人であることを再認識したハワイアンの気持ちが、シンプルな歌詞でストレートに歌われています。


 今夜(i ke*ia po*)、いまここに私はあなたといる。
 そう、今夜、私は帰ってきた。
 それはそれは長い道のりだったよ。
 この場所で(ma ke*ia)しかるべき場所を探す旅は……。

 こんなふうに、いきなり「I ke*ia po*」(at this night)という歌詞ではじまるのは、長い道のりを旅して疲れ果て、どっぷり日も暮れてしまった、そんな感じなんでしょうか。ですが、「ma ke*ia」(この場所で)探していたとされることからすると、物理的に遠い場所にいたわけではないようにも読めます。だとすると、いったいどこをさまよっていたというのか……でも、ともかく、いまあなた('oe)と一緒にいる場所は、この誰かにとって正しい場所であることは確かなようです。もしかすると、「'oe」と呼ばれてはいますが、あなたというのは、探し求めていた場所そのもののことなのかもしれません。 

 私にはもうちゃんとわかっている。
 私の心のふるさと(home)がどこにあるのかを。
 そう、こうして戻ってきたからこそ、今はわかる。

 長い道のりとされるのは、もしかすると、精神的なことがらについての比喩的な表現なのかもしれませんね。そう、おそらく、「心の旅」と言い換えることができるようなたぐいの……。

 もう二度とさ迷うことはない。
 ハワイ人であることを、こうして正しく悟ったからには。

 ハワイのひとびとにとっての「ハワイ人であること」がどういうことなのかについて、具体的に語られることはないのですが、このことが非常に重要な意味を持っていることだけは伝わってきます。そして、もしかすると、タイトルにもなっている「He Hawai'i au」というフレーズ、ハワイにルーツのあるひとなら、だれもがある共通の思いをかきたてられる、特別なことばだったりするのかも……最初から最後まで、結局、「He Hawai'i au」としか歌っていないように思える歌詞をたどっていると、それもあながち間違いではないような気がしてきます。あるいは、この歌が三人のミュージシャン**のコラボレーションから生まれたものであることも、個人の思いを超える大文字の「わたし」に語らせているような、淡々とした歌詞のスタイルにつながったのかもしれません。
 歌のメッセージがシンプルなだけに、ミュージシャンごとに異なる表現を比べてみるのも興味深かったりします。たとえば、上に挙げたHo’okenaバージョンでは、彼ら独特のコーラスがかもし出す重厚な感じから、過去の自分自身の歩みを静かに振り返っているような、なんとなく厳かな印象があります。一方、Paloloバージョンのスピード感のある演奏と歌声は、どこまでもまっすぐ未来に向かっていくような軽やかさ、そして若々しいエネルギーに満ちているように感じられます。ひとそれぞれに違う人生があるように、『He Hawai’i Au』は、この歌を口ずさむハワイアンの数だけあるに違いない、ハワイアンであることにまつわる無数の物語のBGMになってくれる、そんな歌なのかもしれません。


*:「He Hawai'i au」の「he Hawai'i」と「au」は、それぞれ「a hawaiian」(ハワイ人)「I」(私)にあたる。ハワイ語の基本的な語順は英語と逆になっていると考えると理解しやすい。

**:この歌は、Peter Moon、Ron Rosha、Alice Namakeluaのコラボレーションによって作られたもの。 

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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。