Kaulana mai nei e* kou inoa la* Ka nani a’o Ki*hei Ka nani ho’okipa me ke aloha la* I ka ‘olu a’o Ki*hei
忘れがたく記憶にとどめられた旅の風景が、その道中のはずむ気分のままに歌われているような、晴れやかな印象がある『Ki*hei』。素朴でかざらない雰囲気に思わず引き込まれてしまいますが、「温かい気持ちで迎えられ」(ho’okipa me ke aloha)、「心地よさに包まれた」(i ka ‘olu)と描写されるその土地のすばらしさが、その場の臨場感とともに語られていきます。
Eia au ke noho aku nei la* Ka nani a’o Ki*hei Ma Ki*hei aku nei no* au la* ‘Ike ‘ia a’o Waiakoa
ヒョウタンのような形をしたMaui島の、ちょうど南側のくびれに位置するKi*heiは、Ulupalakuaから北向きにまっすぐ18キロメートルにわたって続く海岸線が、Ma*’alaea湾方向に弧を描きはじめるあたりにあるまち。標高約3千メートル超のHaleakala*の頂上から、南西方向に連なる尾根を背にする地域ですが、海沿いのKi*heiに至るまで、同じ尾根を背にする南側の急斜面とは対照的な、比較的ゆるやかなスロープが続いています。年間降雨量が30センチメートルにも満たず、しかも雨期の11月から4月に限られるという乾いた土地で、その分、太陽の日差しに恵まれていたりする自然環境も、この歌の明るく曇りのない感じにあらわれているのかもしれません。 このバースでは、「さぁ、私は(Ki*heiに)いる」(eia au)という勢いのある表現に続き、視界の広がりを感じさせる「aku nei la*」が繰り返されています。このあとに続くWaiakoaという地名が、海沿いに位置するKi*heiから山側に続く谷沿いの地域であることから考えると、作者の視線は海から山に至る空間の広がりに向かっているものと思われます**。
Ha’ina hou ‘ia mai ka puana la* Ka nani a’o Ki*hei Kaena a’e no* au ‘o ka ‘oi la* Ka nani a’o Ki*hei
Maui島のなかでも早くから観光地化され始めたことから、近年になって計画的に開発されたリゾート地にはない、自然発生的な印象があるというKi*hei。かつてはお金持ちに好まれたエリアだったようですが、現在は庶民が日光浴に訪れるような、飾らないビーチでもあります。その一方で、ウィンドサーフィン初心者には最適な条件がそろっており、風や波の変化がヨットセーリングにも好まれるようです。 そんなKi*heiですが、この歌の作者のまなざしは、どちらかというとそういった一般的な観光には向けられていないような気がします。そして、そのことを決定づけているように思うのが、最後に「魚釣りをしているひとびと」(na* ka*naka la* e lawai’a ana la*)が登場するあたり。働く漁師を目にしたのではないにしても、作者のこころを捉えたKi*heiのすばらしさは、自然との共生のなかで営まれる、地に足のついたひとびとの暮らしだったのではないかと……。そんなことを考えながら、「Ki*heiの美しさ」(ka nani a’o Ki*hei)として語られている風物の向こう側に、ハワイに生きるひとびとが大切にしている、もう一つの風景があるような気がしています。
by Kai Davis
*:「Aku nei la*」の「aku」は話者から投げかけられる視線、「la*」は視線の向こうに広がる空間がそれぞれ感じられることば。 **:海から山に向かう帯状のエリアを生活圏として意識する仕方は、ハワイ古来の空間認識の名残でもあります。
参考文献 1)Kyselka Will, Lanterman R: Maui-How It Came To Be. Honolulu, University of Hawaii Press, 1980, p121, p148, p189 2)McMahon R: Adventuring in Hawaii. Honolulu, University of Hawaii Press, 2003
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