Ku'u pua ku'u lei nani mae 'ole, ea Ke ola mau loa e ku'u lei Ke kali aku nei ia* 'oe, ea E ho'i mai ka*ua la* e pili
忘れ得ぬ大切なあなたに(この歌を捧げます)。
E ku'u sweet lei poina 'ole
「Ku'u pua ku'u lei……」と、「ku'u」(私の大切な)が重ねられるあたりに、相手をこころからいとおしんでいることがうかがわれますし、「ke ola mau loa」(いつも健やかでありますように)と少しかしこまったフレーズには、祈りを捧げるような雰囲気もあります。そして、なんといっても極めつけは、「あなたのことをずっと待っています」(ke kali aku nei ia* 'oe)と、遠い未来を眼差すように歌われるところでしょうか。いろんなことを語り合い、いい時間をともに過ごした二人の大切な思い出が、奇跡のように美しく結晶化した歌詞ではないかと思われます。 作者のEmma DeFriesは、Kaho’olawe島を守るべく活動するハワイの若者たちを支援した、最初期のリーダー的存在のひとり。古代にはハワイの四大神のひとつ、Kanaloa信仰とともにあったKaho’olawe島ですが、1941年にはじまった米軍による爆撃訓練によって、島の自然は壊滅的なダメージを受けていました。そんなか、1970年代に抗議運動が盛り上がり、ひとが立ち入れなくなっていた島を占拠すべく実力行使に出るグループがあらわれます。その際、彼らとともにKaho’olawe島を訪れて儀式を行い、自身に備わる精神力(mana)でもって米軍を震え上がらせるほどの影響力を発揮したのが、この歌の作者Emma DeFries。おそらく彼女の祈りは、痛めつけられたハワイの大地の声なき声をよみがえらせるような、パワーに満ちたものだったのではないかと想像されます。そんな彼女の存在感は、Kaho’olawe島を取り戻そうとするひとびとの精神的な支えでもあったようで、彼女が亡くなったときの活動家たちの喪失感は、相当なものだったといいます。 合衆国併合以来の不幸な歴史の中で、さんざん破壊されてきたハワイの大地を守ることは、ハワイ人としてのアイデンティティを取り戻すことにも深くかかわっていたはず。そんな文脈のもとでこの歌のメッセージを読み直してみると、友情や愛情といったのでは足りない、なにかもっと深いこころの交流みたいなものが表現されているようにも思えてきます。大地に根ざした正しさを実現すべく、若い世代と、より伝統に近い先の世代とがともに歩むこと。そんな世代を超えた連帯のありかたに、ハワイ的価値観の核心部分があるような気がしています。
by Emma DeFries
参考文献 1)Trask HK: From a Native Daughter-Colonialism and Sovereignty in Hawaii (Latitude 20 Books). Honolulu, University of Hawaii Press, 1999, p98
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