Kaulana Nā Pua




 ハワイのネイティブといえば、
 大地の理(ことわり)に従って生きてきたことで名高い。
 (そこへ)腹黒い使者がやってくる。
 略奪者の強欲さで記された要求書(をたずさえて)。

 Kaulana nā pua aʻo Hawaiʻi
 Kūpaʻa ma hope o ka ‘āina
 Hiki mai ka ‘elele o ka loko ʻino
 Palapala ʻānunu me ka pākaha

 ハワイの波の音や風の気配みたいに、ふんわり包み込む素直なメロディがここちよい『Kaulana Nā Pua』。タイトルにもある「nā pua」(puaの複数形)は、ハワイに生まれ育ったネイティブのひとびとをたとえたもので、彼らがなにより「ka ʻāina」(大地)を尊いものとしてその摂理に従ってきた(kūpa’a ma hope o~)ことが歌われている……とここまではいいのですが、いきなり「悪意のある使者」(ka ʻelele o ka loko ʻino)がやってきて、しかも、法外な要求をつきつける書面(palapala)をたずさえている(?!)なんて歌詞に驚かされるこの歌。いったいなにごと?!って感じですが、その背景には、外国人勢力の台頭とともにハワイ王朝が実権を失うに至った、19世紀末のハワイの政治状況があったりします。

 Keaweの島ハワイから声援が届く。
 Pi'ilaniの港湾で有名なマウイ(から)だって力を貸す。
 Mano(okalanipo)で名高いカウアイ(から)も。
 そう、Kākuhihewaの島、オアフ(のメンバー)ともしっかり手をたずさえて。

 Pane mai Hawaiʻi moku o Keawe
 Kōkua nā Hono aʻo Piʻilani
 Kākoʻo mai Kauaʻi o Mano
 Paʻapū me ke one Kākuhihewa

 ここに登場する「Keawe」「Piʻilani」「Manōokalanipo」「Kākuhihewa」は、Hawaiʻi、Maui、Kauaʻi、Oʻahuの各島が、詩的に表現されるときによく用いられることば。それぞれ古代にひとびとを治めたリーダーの名前ですが、いずれもKamehameha一世によるハワイ統一以前の人物であり、単なる修辞である以上に、島ごとの歴史的背景や文化の違いも含みとして持つことばなのかもしれません。また、先のバースで、ハワイのひとびとがなにより「ka ʻāina」(大地)を尊いものとして生きてきたと歌われましたが、その意味では、これらのリーダーたちも、「ka ʻāina」にとっての正しさに従ってこそ、ひとびとの信頼を得ることができたものと思われます。……。

『Kaulana Nā Pua』(Ellen Wright Prendergast)について、zoomオンライン講座で解説しています。
アーカイブ(録画)による受講のご案内は、こちらをご覧ください。
http://sukimano.com/blog-entry-650.html

参考文献
1)Noyes MH: We will eat stones. Hawai’i chronicles-island history from the pages of Honolulu Magazine. Dye B ed., Honolulu, University of Hawai’i Press, 1996, pp191-195
2)Kanahele GS: Hawaiin music and musicians-an illustrated history. University of Hawaii Press, 1979, pp335-344
3)Budnick R: Stolen kingdom-an American conspiracy. Honolulu, Aloha Press, 1992
4)Osorio JK: Dismembering lahui-a history of the Hawaiian nation to 1887.
Honolulu, University of Hawaii Press, 2002
5)Kanahele GS: Hawaiian music & Musicians-an encyclopedic history. Honolulu, Mutual Publishing, 2012, pp454-459
6)Pukui MK: 'Olelo No'eau-Hawaiian proverbs and poetical sayings. Honolulu, Bishop Museum Press, 1983
7)Silva NK: Aloha Betrayed-native Hawaiian resistance to American colonialism. Durham, Duke University Press, 2004, pp164-167
8)Trask HK: From a Native Daughter-Colonialism and Sovereignty in Hawaii (Latitude 20 Books). Honolulu, University of Hawaii Press, 1999, pp113-122


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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。