『ハワイ語のはなし』(教室で使ってみたい会話文)

ハワイ語のはなし195(2019年4月配信)
教室で使ってみたい!ハワイ語


 ハワイの先生は「e na* hauma*na!」(生徒のみなさん!)なんて呼びかけるのかなぁ……なんて想像したりしながら、いつか現地のハワイ語教室に通うことを夢みている私です。なかなかハードルは高いですが、今回は、先生と生徒が教室でやりとりしそうなハワイ語を手がかりに、ちょっぴりハワイ気分でハワイ語を楽しんでみたいと思います。


●呼びかけることばあれこれ

 まずは、なんにんかの生徒が待っている教室に先生が登場し、「さぁこれから授業ですよ」と声をかけている場面から。朝一番の授業なら「おはよう!」からはじまりそうなので、おそらくこんな感じでしょうか……。

1)Aloha kakahiaka ka*kou, e na* hauma*na!

 生徒のみなさん、おはよう!

 あいさつのことばとして広く知られる「aloha」ですが、朝を意味する「kakahiaka」と一緒に用いると、英語の「good morning!」に近いフレーズになります。あとに続く「ka*kou」は、三人以上の「私たち」を意味し、こんなふうにあいさつのことばに添えられたりします。もしもあいさつする相手が一人なら、その場にいるのは私とあなたの二人しかいないので、「(二人の)私たち」をあらわす「ka*ua」が用いられます。細かい話ですが、二人と三人以上を区別するあたりに、ハワイ的人間関係の繊細さがあらわれているといえるかもしれません。
 ここでは、「生徒たち」(na* hauma*na)と、複数の定冠詞「na*」を用いてみましたが、「クラスのみなさん」というフレーズだと、「e ka papa」となります。「Papa」というと、ハワイの創世神話『Kumulipo』の一節、雨を降らせる天(Wakea)とその雨を受ける大地(Papa)を連想するかたもおられるでしょうか。大地とクラスがなぜ同じことばなのか!?って感じですが、大地が層をなすものであるように、クラスも初級、中級、上級……と積み上がっていくところから、ハワイ語的には同じイメージで語られるようです。
それはともかく、ここではなんといっても呼びかけのキホン、「e」の使い方に注目しておきたいと思います。「E ke kumu」(先生!)、「e Pualani!」(Pualaniさん!)と、名詞一般と固有名では冠詞のあるなしの違いがあることにも注意しましょう。
 こんなふうに「みなさん、おはよう!」ですんなり授業がはじめられたらいいですが、生徒たちがおしゃべりに夢中だったりしたら、次のようなフレーズが登場しそうです。

2)Poha* ka leo!

静かにしなさい!

 「Poha*」は「こわれる」「はじける」「ぶつかる」を意味し、大きな音や衝撃をともなうなにかが起こることをあらわす動詞。なので2)を文字通りに訳すと「声がぶつかる」、つまり「うるさい!」ということになります。もう少し控えめな「静かに話しなさい」くらいの声かけなら、「‘o*lelo ma*lie」あたりになると思われます(「ma*lie」は「おだやかに」「静かな」)。
逆に、あまりに自信なさげに話す生徒には、次のように指導するかもしれません。

3)‘O*lelo ma ka leo nui.  

大きな声で話しなさい。

※‘o*lelo(話す)、ka leo(声)、nui(大きい)

 「Ma」というと「ma uka」(山手に)みたいな感じで場所とともにもちいられることばですが、こんなふうに誰かの「ふるまい」(マナー)をあらわすときに用いられることも記憶しておきましょう。


●「課題」をめぐるやりとり

 次に、先生が生徒たちに課題を出すときのやりとりをみてみたいと思います。

4)E na* hauma*na, eia ka ha'awina i ke*ia la*.

生徒のみなさん、今日は課題があります。

 ※ka ha'awina(課題、宿題)、i(~に:時をあらわす)、ke*ia la*(今日)

 いま、ここに「~がある」ことをあらわすのが「eia」ですが、こんなふうに、いままさに「(なにかを)差し出す」「登場させる」ときにも用いられます。「さぁ、課題ですよ~」みたいな感じですね。これに「準備はいいですか?」を続けるとすると……

5)Ma*kaukau 'oukou?

 準備はいいですか?

 ※ma*kaukau(準備できている、~できる)、 'oukou(あなたがた)

 生徒たちに問いかけているのはあきらかなので「ma*kaukau?」だけでもOKですが、主語を明確にしたい場合は「'oukou」と続きます。1)の「ka*kou」(私たち)と「'oukou」の語尾が似ていることから想像がつくかもですが、「ka*kou」と同様に「'oukou」も三人以上に用いられる「あなたがた」。二人の場合は「’olua」となります。
 次に、「はい、準備できています」と答えるときのフレーズを挙げてみます。

6)'Ae, ma*kaukau ma*kou.

 はい、私たちは準備できています。

 再び「-ou」で終わる代名詞、「ma*kou」(私たち)の登場です。これは「ka*kou」同様、「(三人以上の)私たち」を意味しますが、準備できているのは生徒たちで、課題を与える先生はそこに含まれないことから、話しかけている相手を含まない「ma*kou」(私たち)が用いられています。


●「質問」してみる

 最後に、生徒からの質問に先生が答えるときの、短い会話文をみてみたいと思います。まずは、「先生、質問があるんですけど?」みたいな、生徒からの問いかけをハワイ語にしてみます。

6)E ke kumu, he ni*nau ka'u, ke 'olu'olu 'oe?

 ※ke kumu(先生)、he ni*nau(質問)、ka'u(私の、私が持っているもの)、ke 'olu'olu 'oe(「~してください」と相手にお願いするときのフレーズ)

 冒頭の「先生!」(e ke kumu)という呼びかけのあとに、「he ni*nau ka'u」(私は質問がある)と続き、最後にお願いするときのフレーズ「ke 'olu'olu 'oe」で締めくくられるという構成の文です。ちょっと長いですが、重要なのは「he ni*nau ka'u」の部分。単語を入れ替えるなどしてアレンジすると、「~を持っている」という文をいろいろ作ることができます。たとえば……

7)He ni*nau ka*na.  彼は質問があります(彼が持っているものは質問です)。

 ※he(不定冠詞)、ka*na(彼の、彼が持っているもの)

8)He wahine ka'u.  私には妻がいます(私が持っているものは妻です)。

 ※ka wahine(女性、妻)

7)でいえば、「he ni*nau」と「ka*na」(彼が持っているもの)はイコールで結ばれる関係にあります。「AはBである」とまとめることができる、いわゆる「である文」の一種ですが、直訳すると「彼が持っているものは質問です」となり、意味的には「彼は質問があります」ということになります。
 続いて、先生が「あなたの質問は何ですか?」とたずねるとすると……

9)He aha ka*u ni*nau?

 あなたの質問はなんですか?

 ※he aha~?(なんですか?)、ka*u(あなたの)

 「He aha~?」は、「なんですか?」(what~?)とたずねるときの便利なフレーズで、質問するときにもそのまま使えたりします。

10)He aha ka mana'o o ka hua'o*lelo “pule”

 「Pule」という単語の意味はなんですか?

 ※ka mana'o(意味、考え)、o(~の)、ka hua'o*lelo(単語)、'o ia(それは)、maika'i(よい)、ke*na*(その)

 「Pule」というと、「祈り」とか「週」という意味のあるハワイ語。「『週』がその意味ですよ」(“Week” 'o ia ka mana'o)と答える前に、「maika'i ke*na* ni*nau」(その質問はいいですね)と返してもらえると、質問した生徒としてはうれしいかもしれませんね。
 ここまで「he ni*nau」(質問)および「he aha~?」(what?)と不定冠詞「he」を用いてきましたが、「ka hua'o*lelo」(単語)のところは定冠詞「ka」になっています。ざっくり両者の違いを説明すると……「質問があるんですけど?」「(その質問は)なんですか?」というやりとりでは、質問(という種類のもの)が漠然と話題になっていることから不定冠詞「he」。続いて「Pule」という単語が具体的に質問される段階になってはじめて、「ka hua'o*lelo」と「ka」(定冠詞)が登場しているという感じです。微妙なところですが、細かいニュアンスを読み取るために、ぜひこのあたりの使い分けにも敏感になっていただければと思います。
 
 ほかにも「(私は)理解しました」(maopopo i a'u)とか「OK!」(hiki no*)、「(あなたは)よくできました」(maika'i ka*u hana)あたりなら、教室に限らず日常会話でもすぐに使えそうです。もっとも、いきなり口にすると相手が驚く可能性大なので、まずはメール文に添えてみるあたりからはじめてみるといいかもしれません。

参考文献
1)Lake JK: Olelo Hou-Basic Conversational Hawaiian. Honolulu, Hawaii Academy of Arts Music & Dance-Ha*lau Mele, 2016, p54, p62

※オキナ(声門閉鎖音)は「'」、カハコー(長音記号)は伸ばす音の後ろに「*」をつけています。ハワイ語は、とりあえずローマ字読みすることが可能です。


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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。