『ハワイ語のはなし』(「la*」のニュアンスについて2)

ハワイ語のはなし173(2018年4月配信)
173 ふたたびの「la*」

            
 前々回の『ハワイ語のはなし』で、空間的および心理的な隔たりを感じさせることば「la*」および「-la」を含むことばをいくつかご紹介しました。「ちょっと難しかった!」というかたも、まずはその語感を感じることができたらOKだと思います。知っている「-la」を含むことばが増えてくると、文脈にあわせて訳すコツがつかめるようになるはずですから……。もっともこのあたりは、努力あるのみ!?だったりするわけですが、今回は復習もかねて、前回、取り上げなかった「laila」の用法をさぐってみたいと思います。
※今回はじめてアクセスしてくださったかたは、ぜひ、『ハワイ語のはなし171』もあわせてお読みください。
 隔たりを表す「-la」を含む「laila」は、日本語や英語の「そこ」(there)にあたることば。一緒に用いることばによって、場所だけでなく時間や理由をあらわすなどさまざまな用法があり、いずれも対象を「それ」と指し示す感じを含む点は、ほかの「-la」を含むことばと共通しています。
 まずは基本的なところから、場所をあらわすときの用例をみてみます。


●「そこで」あるいは「そこへ」の「i laila」

1)’Ike aku au i laila.  私は そこで 見ました。
 見る       私   そこで

2)Hele au i Laila.  私は そこへ 行きました。
 行く  私   そこへ

 1)で動詞「’ike」(見る)に続いている「aku」は、話し手から「離れていく方向」をあらわすことば。訳語にはあらわれていませんが、私(au)の眼差しが、足元や手元といった近くではなく、少し遠くに投げかけられていることが「aku」で表現されています。そして、この「aku」の感じとリンクしているのが「i laila」(そこで)。「Noho au i Hawai’i」(私はハワイに住んでいます)といった文の「i」と同じで、「laila」に「i」がつくことで場所の表現になります。
 一方、2)にも同じ「i laila」が用いられていますが、訳語が1)と違っているのは、同じ場所でも、移動をあらわす動詞「hele」(行く)の目的地をあらわしているからです。こんなふうに「i」は、あるところにとどまるときだけでなく、そこへ向かう動きをともなう場合にも用いられます。そして、場所を示す「i」と同じ働きをしながら、移動をともなうことがないのが「ma」。というわけで、1)の「i laila」は「ma laila」と置き換え可能ですが、2)に「ma」は使えないということになります。
 少し話がそれますが、1)2)の例文には、いずれも過去、現在、未来といった時を特定できることばが含まれていません。そうなってくると、文脈から判断するしかないのもハワイ語の特徴なのですが、ここではとりあえず「~しました」と訳しています。
 そして、そのあたりをすっきりさせてくれるのが、過去のある時点でなにかが起こった(始まった)ことをあらわす「ua」。次に、この「ua」を使って、2)の例文を少し書き換えてみます。

3)Ua hele au mai liala.   私はそこから来ました。

 こんなふうに2)で「laila」の前に付いていた「i」を「mai」(~から、from)に変えると、「i」とは逆方向の移動になります。「Laila」の前にくることばによって少しずつ意味が変わるあたりがつかめたところで、同じような例をもう少しみてみたいと思います。


●「そこの」を意味する「o laila」と「ko* laila」

4)Makemake au i ka mea ‘ono o laila.
 ほしい    私  を   もの   おいしい  の  そこ

 私は そこの おいしいもの が ほしい。

 これは、ここではないそこ(laila)の特産品なんかがほしいときに使えそうな表現です。そしてこの文では、「i laila」(そこで)の「~で」(i)にあたるところが「~の」(o)に変わっています。とりあえず、この言い方をおさえたうえで、少し語順を変えてみます。

5)Makemake au i ko* laila mea ‘ono.
 ほしい    私  を   そこの もの   おいしい 

 私は そこの おいしいもの が ほしい。

 4)の「o」が5)では「ko*」に変わっていますが、いずれも「~の」を意味しています。「ka mea 'ono o laila」の「o laila」が「ka」の後ろに移動して「ka+o+laila」となり、つづまって「ko* laila」になっている、つまり、「ko*」の「k-」の部分が4)の「ka」にあたるわけです。
 「Ko*」(~の)と同じように訳される「no」というのもありますが、こちらは「n-」に含まれるニュアンスが追加されます。

6)No laila ‘o ia.   彼はそこの出身です。
  そこの    彼

 「No」に含まれている「-0」は、5)の「ko*」と同様、4)の「o」と同じもの。そして、「n-」が付くことで、「~に属する」「~の出身」という意味合いになります。


●理由をあらわす「no laila」(そのために)

7)Wela ke*ia la*. No laila…….  今日は暑いよね。だから……
 暑い  この  日   だから……

 6)と同じ「no laila」ですが、ここでは「no」が「~のために」「~のおかげで」といった「理由」をあらわすことばとして用いられています。「そのために」という訳語に「o」(~の)が含まれているものの、この「laila」に場所の意味はありませんが、「-la」に含まれる少し隔たったところをあらわす感じは、すでにある事実や話題にのぼったことなどを「そのことで」とあらためて言い直しているところにあらわれているといえそうです。
 一方、同じように先に言ったことや話題を受けながら、さらっと流している感じがあるのが「a* laila」。「それで」(then)みたいな感じに訳され、「a*」(そして、and)とほとんど違いがなさそうですが、「a* laila」では「-la」のところが先に述べられたことを受けているのに対して、「a*」は単に前後をつないでいる点では異なります。
 理由をあらわす「no」がわかってくると、「no ka mea」(そのことが理由で、なぜなら)なんて慣用句も、すんなり頭に入ってくると思います。さらに、このフレーズの「mea」(もの、こと)を「aha」(なに?)という疑問詞に変えると、「no ke aha?」(どうして?)と理由をたずねる言い方になったりとか……。ところで、「no ka~」「no ke~」と冠詞が変わりましたが、「ka」と「ke」の使い分けはバッチリですか?ちょっとあやしいかな……というかたは、「ハワイ語のはなし19 定冠詞からはじまる物語」あたりを読んでみてくださいね。


※オキナ(声門閉鎖音)は「'」、カハコー(長音記号)は伸ばす音の後ろに「*」
をつけています。ハワイ語は、とりあえずローマ字読みすることが可能です。
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。