ハワイ語のはなし197(2019年5月配信)
あらためて「はじめの一歩」
お気づきのかたも多いと思いますが、このほど本メルマガのバックナンバーが非公開となり、最新号の配信のみのサービスとなりました(まぐまぐの配信システムの変更による)。これまで、どこから読んでもOK!的な内容を目指してきましたが、バックナンバーが参照できないとなると、さすがにはじめましてのかたは戸惑われるはず……。というわけで、今回は、最近ご登録くださったみなさんをサポートしつつ、おなじみさんには知識の整理になりそうな、ハワイ語にアプローチするコツをまとめてみたいと思います。
●「大事なことは先」がハワイ語の基本
「Aloha ka*kou!」(みなさん、こんにちは)みたいな短いフレーズならいいですが、そこそこ単語が連なるハワイ語文だと、辞書で意味を調べて並べただけでは、まったく意味不明(!)ということが結構あります。ハワイ語と日本語ではことばを並べる基本的なルールが異なるためですが、まずはそのあたりを軽く確認してみたいと思います。
たとえば、「あなたは美しい」とか「私は行きます」といった文を、ハワイ語的な語順に並べ替えると、それぞれ次のようになります。
1)美しい あなた あなたは美しいです。
Nani no* 'oe.
2)行く 私 私は行きます。
Hele au.
こんなふうにハワイ語では、ものごとの「状態」(美しい)や「動作」(行く)をあらわすことば、いわゆる述語(述部)が文頭にくるのが基本のパターン。そして、このことは「大事なことは先に」というハワイ語のルールを示してもいます。たとえば1)では、「nani no*」(きれいですね)というだけで、いま話題になっていることがきれいなんだなと察しがつきます。一方、「'oe」(あなた)と言っただけでは、「あなた(つまり私)がどうかした?」と返したくなりますね。そう、話題が共有されている場面では、多くの場合、主語よりも述語のほうが重要で、そのためハワイ語では、先に述べられる傾向があるというわけです。
もっとも、「大事なことは先に」ですから、話し手が伝えたいことがらがシフトすると、あわせて語順も変わったりします。このあたりについても次項で確認したいと思いますが、ここでは、日本語の「~は」とか「~です」「~ます」といった、いわゆる文を整えることばがハワイ語にはないことを心にとめていただけたらと思います*。
●「'o」がつくのは強調したいことば
次に、話し手の意識によって語順が変わる仕方を、「AはBである」と訳される「である文」で確認したいと思います。まずは、気になる誰かを花にたとえるときのフレーズから……。
3)He pua 'oe. あなたは花(のようなひと)です。
ここで「pua」(花)についている「he」は不定冠詞と呼ばれることばで、ニュアンスとしては、特定の花ではなく、あなたの性質を語るために、「(花)という種類のもの」という意味合いで用いられています**。この文を、「'oe」(あなた)を強調すべく書き換えてみると……
4)'O 'oe, he pua. あなたなんですよ、花のようなひとは。
こんなふうに、「A=B」という文を入れ替えて「B=A」にできるのも、ハワイ語の特徴のひとつ。また、このルールは、イコールで結ばれる要素(A、B)が長くなっても変わりません。なので、長くてやっかいな印象の文でも、「'o」や「he」に注目すると、どこからがAでどこまでがBなのかを判断しやすくなります***。
●ことばを連なりでとらえる
ここまで、ハワイ語のことばの並び方(語順)にまつわるルールをざっくりたどってきました。語順のルールがわかってくると、ここは主語、ここは動詞といった具合に、文の要素を切り分けられるようになる……はずなのですが、その前につかんでおきたいのが、ことばを連なりでとらえるコツ。まずはその基本のキホンからまとめておくと……
*もの・こと(名詞)には定冠詞「ka」「ke」もしくは不定冠詞「he」がつく
5)ka pua 花
6)ke aloha 愛、深い思い
7)ku‘u lei 私の(大切な)レイ
8)he pua 花(という種類のもの)
ハワイ語の名詞に、定冠詞がつくというルールはとにかく徹底していて、「ku‘u」(私の大切な)といったことばにも、「k-」の部分に定冠詞が含まれていたりします。繰り返しになりますが、定冠詞と不定冠詞「he」のニュアンスの違いも、なんとなくでも気にとめておいてくださいね。まずは「He aha ke*ia?」(これはなんですか?)、「He pua ke*ia」(これは花です)といったやりとりに、定冠詞ではなく不定冠詞「he」が用いられることを押さえておきましょう****。
もうひとつ、「holo(走る)が「ka holo(走ること)に、「nani(美しい)が「ka nani(美しさ)になったりと、動作や状態をあらわすことばを名詞にすることも、定冠詞の重要な役割です。
次に、先に挙げた名詞の前に、「me」(とともに)、「no」(~のために)といった短いことばを添えてみます。
*名詞に「意味を添えることば」
9)me ke aloha 愛とともに
7)no ku‘u lei 私の(大切な)レイのために(捧げる)
こんなふうに、「me」「no」といった短いことばは、次にことばが連なってはじめて意味を持ちます。このあたりのよくみかけるフレーズに慣れることで、ことばを連なりでとらえるコツをつかんでいただけるのではないかと思います。
最後に、二つのことばを「つなげることば」として、「~の」と訳される「o」の使い方をみてみます。
*二つのことばを「つなげることば」
8)ka nani o ke*ia pua この花の美しさ ※ke*ia(この)
この「o」も、先の「意味を添えることば」同様、単独ではなく「o ke*ia pua」(この花の)と連なってはじめて意味を持ちます。日本語では「この花の美しさ」と語順が逆になっていることにも注意しましょう。「Ka pua nani
(美しい花)といったりするときの、修飾することばの語順と同じですね。
まもなく200回目という節目を迎えることをちょっと意識したりもしながら、仕切り直しの意味を込めてまとめてみました。これからも、「どこからでも読める」というコンセプトのもとで続けていくつもりですが、と同時にブログのほうには、ある程度、整理した形でアーカイブ化していきたいと思っています。内容についてのご要望などにもできるだけお応えしたいので、気軽にご連絡いただけると幸いです。メールお待ちしております。
*:「Nani no* 'oe」(あなたは美しい)の「no*」は、特定の意味や文法的な役割というよりも、話し手の感情というか気持ちがあらわれることば。日本語で「きれいよね」「きれいだわ」と言ったりするときの語尾に近いと考えられますが、その意味で、ハワイ語の「no*」には、文の調子を整える役割があるとも言えそうです。
**:漠然と「~という種類のもの」というニュアンスのある不定冠詞に対して、話題になっている具体的なものごとにつくのが定冠詞「ka」「ke」。たとえば、「朝ご飯になにを食べましたか?」という問いに対する「パン」には不定冠詞(たとえば、「〈ご飯ではなく〉パン」というニュアンス)。一方、「○○ベーカリーのパンはおいしい」という文脈であれば、定冠詞となります。
***:4)で「'oe」を文頭に連れてくるときに用いられた「'o」は、文頭には大事なことがくるというルールからすると、「強調の印」であるともいえます。
****:定冠詞の使い分けは、おおむね「k」「e」「a」「o
で始まることばには「ke」、それ以外は「ka」というルールがあります(例外あり)。
*お知らせ*
今後のバックナンバーについては、過去のものも含め『隙間のりりーのハワイアンソングブック』にアップしていく予定です。
http://hiroesogo.blog.fc2.com/ ※オキナ(声門閉鎖音)は「'」、カハコー(長音記号)は伸ばす音の後ろに「*」をつけています。ハワイ語は、とりあえずローマ字読みすることが可能です。
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