ここでは、「私」と訳される「au」(wau)ではなく、「私の」(a'u)が用いられています。これは、同じことを言うにもハワイ語と日本語とでは構文(単語の並び方)が根本的に異なるためで、ハワイ語を文字通りたどると「あなたは、ひとです」とまず言ったあと、そのひとがどういうひとなのかを説明することばが「a'u」以下に続いていることがわかります。修飾することばなので「au」(私)ではなく「a'u」(私の)が用いられるわけですが、「ka mea a'u」の「a'u」の位置が変わって「ka+a'u+mea」になると、「ka'u mea」と短くなることも覚えておきましょう。 「Ke*ia」(これ)を強調する場合も、ここまでと要領は同じです。
4)'O ke*ia ka'u e ha*'awi nei ia* 'oe. これ 私の 与える ~に あなた
これこそ 私が あなた に あげる ものです。
先に「ka mea a'u」が「ka'u mea」になることを確認しましたが、ここではさらに「ひと」「もの」の意味で用いられる「mea」が省略されて、「ka'u」(私の)となっています。「k-」のあるなしという違いはありますが、3)の「a'u」同様、ここでも1)の「au」(私)が所有形(~の)に変わっているわけですね。つい「私の」と訳しそうになりますが、意味的には「だれが」、つまり主語的な意味を担う部分なので、日本語に訳すときは「私が」とするほうがしっくりきます。 長い例文が続きましたが、「'o」がことばを強調するときに用いられる感じをつかんでいただけたらと思います。
そして、7)のPuaを「ia」(彼女)に変えると「he kumu 'o ia」となります。こういった文中の「’o+固有名詞」や「’o ia」には、文頭にあるときと違って強調の意味はありませんが、「’o」が付くことで、話題のポイントがそこにあることが示されているのではないかと考えられます。というのも、「彼/彼女」の意味で用いられる「ia」に、「’o」が付かない場合もあるからです。たとえば……
8)'O ke kumu no* ia. 先生 彼
彼は先生なんです。
これは、たとえば「(ああ見えても)彼は生徒ではなくて先生なんですよ」と、先生であることを強調するときの言い方です。文法的に「'o ke kumu no* 'o ia」が間違いということもないようですが、彼(ia)の話であることはそれまでの文脈からわかるはずなので「ia」を強調する必要はなく、会話だと「ia」省略されることもあると思われます**。強調されない「ia」といえば、それまでの文脈や特定の事物を受けて「それが……」と続けるときに近い用法もありますね。その場合の「ia」も省略されることが多いのですが、このタイプの「ia」と、強調の「’o」を用いる例文で締めくくりたいと思います。
9)He mea poepoe ka honua nei. もの 丸い 大地 (いま、ここ)
この大地は丸い。
10)'O ka honua nei, he mea poepoe no* ia. 大地 もの 丸い それ
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