Pua Hi*nano

Pua Hi*nano





https://www.youtube.com/watch?v=zUNM4T-Z1y8


 Hi*nanoの花ってすてきだよね。
 (それは)'Ahuimanuの山手、
 そう、緑生い茂る頂のふもとのところに(育ってる)。
 (だからこうして)君をみつめてるってわけさ。

 He nani ka pua hi*nano, e*he*
 I uka o ‘A*huimanu
 I kumu pali wewehi
 Kau ai ka maka ia* ‘oe

 シンプルで素朴なメロディにのせて、なんとはなしに楽しげでのどかな雰囲気を連れてくる『Pua Hi*nano』。冒頭で「美しい」(he nani)と描写されるhi*nanoにみとれて、その花が育つ‘A*huimanuから目が離せない(kau ai ka maka ia* ‘oe)……hi*nanoが、hala(pandanus)の雄木に咲く花で、その強い香りが恋の媚薬的に語られることも多いことから、少なくとも、誘うような熱いまなざしを投げかけていることだけは確かかもしれません*。

 ほうら、Hi*nanoのつぼみもぷっくりふくらんできたよ。
 そうして森のしげみのなかで花開くんだね。
 ふちのところがツヤツヤしてる。
 Po*'aihaleの雨にぬれながら……。

 ‘O*pu‘u mai ka hi*nano, e*he*
 A mo*hala i ka nahele
 He lalilali ka lihi
 I ka ua Po*‘aihale

 Po*'aihale**の雨にしっとりとぬれながら、つやつやと輝いてみえるhi*nano。そして、ぷっくりふくらみつつある(‘o*pu‘u mai)ということは、しだいに芳香を放ちはじめてもいるはず***……これは、さらっと語られているようでいて、実は次の展開を予感させる描写ではないかと思ったりします。

 Hi*nanoって、ホントいい香りだよね。
 Moa'eの風に運ばれて……。
 そうして思いをかきたてられるんだ。
 その気持ちのいい香りで(胸がいっぱいになる……)。

 Onaona no* ka hi*nano, e*he*
 He ma*puna i ka Moa‘e
 Ho‘olale i ka mana‘o
 Ia hanu anuhea
 
 さぁ、いよいよ、Moa‘e(貿易風)にのって、hi*nanoの香りが届いたようです。そして、その香りは「思いを」(i ka mana‘o)「せき立てる」(ho‘olale)……もういてもたってもいられない、そんな気分にさせられるhi*nanoの香りのようです。

 ねぇ、ぼくの大切なhi*nano。
 その花粉をふりまいておくれよ。
 そうして、今宵は深い香りにつつまれる。
 さぁ、ふたりで夜を楽しもう……。

 ‘Auhea ku‘u hi*nano, e*he*
 E lu* helele‘i ka ‘ehu
 A paoa ke kulu aumoe
 Moe pono iho ka*ua

 ここでは、私の大切な(ku‘u)hi*nanoが、直接声をかけるような仕方で呼びかけられています。しかも、花粉(‘ehu)をふりまいて(lu* helele‘i)と促しているあたり、遠いところで育っているhi*nanoを思い浮かべているようだった、前半の雰囲気とは随分違いますし、じかになにかと触れあっている感じもあるような……そう、いよいよ、深い香りに包まれる(paoa)、特別な夜のはじまりのようです。そうして、しかるべき仕方で眠りましょう(moe pono)と誘ってもいる****……なんだか、ドキドキしてきました。

 この歌のメッセージをこころに響かせて。
 Hi*nanoの花っていいものなんだよ。
 そう、‘A*huimanuを美しく飾りもする……。
 そうして、ぼくの眼差しは君にくぎ付けってわけだね。

 Ha‘ina mai ka puana, e*he*
 He nani ka pua hi*nano
 He wehi no ‘A*huimanu
 Kau ku‘u maka ia* ‘oe

 ここでは、最初のバースで「kau ai ka maka ia* 'oe」(あなたから目が離せない)と歌われたのと同じことが、「kau ku'u maka ia* 'oe」と少しことばを変えて繰り返されています。テーマが歌の冒頭と最後に登場するのは、ハワイ語のメレの伝統的な様式ですが、そうすると、ここまで展開された物語は、もしかしてそんなふうに夢見ただけだった(!?)ということもあり得るでしょうか。それはともかく、少なくとも‘A*huimanuという、いかにも鳥が集まってくることを暗示させる地名が選ばれているあたりには、このメレの重要なメッセージが込められているのではないかと思ったりします。そう、花のミツに誘われてやってくる鳥たちのせわしない感じと、恋の相手を求めてやまない人間の営みは、本質的には同じなんだと……。そんなイマジネーションをかき立てるのに欠かせないのがhi*nanoの香りなのだとしたら、なんと罪深い花だろうかと思わずにはいられない『Pua Hi*nano』。ふと口ずさまれたようなメロディに、ハワイ語の世界の自然観が軽やかにのかっているメレでした。

by Puakea Nogelmeier

*:‘A*huimanuは、O‘ahu島の東側、Ko‘olaupoko地域のKahalu‘uにある峰。Ka*ne‘ohe湾をはさんだ対岸、Mo*kapu半島沖のMokumanu島から鳥がやって来る時期に、地元のひとびとが狩りに訪れるエリアだったとされる。「‘a*hui」は「bunch」「cluster」など集合体をあらわし、獲物の鳥を束ねて運んだことに由来する地名。‘A*hulimanu(文字通りの意味は「鳥が(水を)探す」)と呼ばれ、猟師たちがそこで獲物をやりとりした池もあり、池周辺を中心に猟場があったことがうかがえる。
**:「Po*'aihale」は、O'ahu島、Ka*ne'ohe湾に面したKahalu’uあたりに降る雨の名。Po*'aihalaと呼ばれることもあり、こちらは「hala」の木を「ぐるっと取り囲む」(po*'ai)という意味があり、Hi*nanoのことを歌うにふさわしい地名が選ばれていることがわかる。
***:「'O*pu'u」には、「お腹」「少女の胸」「丘」といった意味もあることから、「ぷっくりふくらんで」と訳出。
****:「Ka*ua」(私たち)が用いられる呼びかけは、相手への誘いの意味を含む表現。

参考文献
1)Sterling EP, Summers CC: Site of Oahu. Honolulu, Bishop Museum Press, 1962, pp194-195
2)Pukui MK et al: Place Name of Hawaii. Honolulu, University of Hawaii Press, 1966, p6
3)Landgraf AK: Na* Wahi Pana O Ko‘olau Poko. Honolulu, University of Hawaii Press, 1994, pp48-49, pp82-83
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。