『ハワイ語のはなし』(「la*」の基本)

ハワイ語のはなし171(2018年3月配信)
La*のはなしですが、なにか?


 なんとなく楽しげな雰囲気があって、日本語でも英語でも、「シャラララ~」みたいな仕方で歌うときの音だったりする「ラ」(la)。そのあたりはハワイ語にも似たところがあって、ことばの調子を整える「la*」の用法があったりします。もっとも、すべての「la*」に意味がないかというとそうでもなくて、ハワイ語の「la*」を含む単語やフレーズをたどってみると、ある共通の語感のもとで用いられていることがうかがえます。
 今回は、そんな「la*」のニュアンスを、いろんな角度からたどってみたいと思います。


●距離的な隔たりをあらわす「la*」

 まずは、よく用いられる基本的なことばを挙げてみます。

 1)ke*la*  あれ

 ずばり、「ke*la*」の「-la*」の部分が、対象との間にある隔たり(距離)をあらわしています。Ke*la*の「ke-」の部分は定冠詞にあたり、全体として距離を感じるものごと全般をあらわすわけですね。近くにあるものに対して用いる「ke*ia」とセットで覚えたいことばですが、簡単な例文を挙げてみると……

 3)He hale ke*ia.  これは家です。

 4)He hale ke*la*.  あれは家です。

 ※「hale」(家など建物一般)

 「Ke*ia」「ke*la*」であらわされる距離はいずれも相対的なもので、話し手の近くが「ke*ia」、遠くが「ke*la*」となります。「あれ」と訳されるハワイ語には、もう一つ「ke*na*」もありますが、こちらは話し手にとっての遠くが、聞き手にとっては近い場合に用いられることば。一方、「ke*la*」は話し手、聞き手双方にとっての遠くをあらわすのですが、このことからも、「-la*」が隔たりを意識させることばであることがうかがえます。
そんな「-la*」で表現される距離の感覚がわかってくると、次のようなニュアンスの違いも理解しやすくなります。

 5)Ke*la* ka pane.  答えはあれです。

 6)Pe*la* ka pane.  答えはあのような感じです。

 ※「ka pane」(答え、answer)、「pe*la*」(あのような、like that)

 6)の訳でもわかるように「pe-」を含むことばには、「~のような」というニュアンスがあります。5)と6)の違いでいえば、「ke*la*」(あれ)は断定的、「pe*la*」(あのような)には、「~な感じ」と付け加えたくなる印象というか、場合によっては輪郭をあえてはっきりさせない言い方にもなります。「-la*」であらわされている距離についていえば、「ke*la*」のほうが具体的な距離、「pe*la*」は対象との心理的な距離が表現されている、といったところでしょうか。


●単独で用いられる「la*」

 次に、単語に含まれるのではなく、単独で用いられる「la*」をみてみたいと思います。

 7)ua hale nei  いまちょうど話したこの家

 8)ua hale la*  いまちょうど話したあの家
 
 ※8)の「la*」は「ala」に置き換え可。

 「Ua」というと、まずは「雨」(ka ua)を思い浮かべそうですが、ここに挙げた「ua」は、直接、名詞の前に付いて、それが直前に話題にのぼったものであることをあらわします。「そのひとが……」みたいな仕方で、さらに話を続けるときのいいかたですね。あとに続く名詞にも「ua」自身にも定冠詞「ka」「ke」が付かないので、案外、区別しやすいと思います。そして、対象との距離の違いは、「nei」(いま、ここ)と、「la*」(あの)であらわされています。また、注※に記したように、「la*」と「ala」は同じ意味合いで用いられることも記憶しておきましょう。


●動詞に意味を添える「la*」

 動詞とともに用いられる場合にも、「la*」によって空間的な距離が示される場合があります。

 9)Ke kali nei au.   私は(いま)待っています。
     待つ    私

 10)Ke pi'i la*, ke pi'i la*   どんどん登れ、どんどん進め!
     登る

 9)の「ke+動詞+nei」は、その動作がいま現在、行われていることをあらわす表現。7)でみたように、「nei」に「いま、ここ」の意味があるからですね。一方、10)では、「nei」が「la*」にかわることで、空間的に前へ、前へと進む感じが出てきます。「Ke+動詞+nei」も「ke+動詞+la*」も現在進行中ではあるのですが、「nei」では「いま・ここ」が強調されているのに対して、「la*」の方はここではないちょっと先に意識があり、10)のように、ときに「前のめり」な感じがあったりするわけです。そして、8)の「la*」が「ala」に置き換え可能だったように、「ke+動詞+la*」と「ke+動詞+ala」は同じ意味で用いられます。
 「La*」や「ala」を用いることでニュアンスが変わってくる表現には、次のようなものもあります。

 11)E kau ana ke ao.

  雲がかかっている。

 12)E kau la* ke ao i ke kuahiwi.

  雲がそこに、山の上にかかっている。

 ※「ke ao」(雲)、「ke kuahiwi」(山)、「kau」はなにかがある場所に位置することをあらわす動詞。

 「E+動詞+ana」は、「ana」に「持続」(~している)の意味があることから、進行中のことがら一般をあらわす表現*。11)として、雲がかかっている風景描写を挙げましたが、このときの「ana」を「la*」にかえた12)では、雲がかかっている山の上のほうに視界が広がっている、つまり、対象との距離が表現されています。こんなふうに、「ほら、そこに」といいたくなるような感じが、「la*/ana」で表現されるわけですね。持続の意味がある「ana」も、時間的・空間的には遠く(far)をあらわすのですが**、「la*/ala」は「ana」よりもさらに隔たりを感じさせることばのようです。


●語りの「la」、疑いの「la*」

 最後に、ここまでたどってきた「la*」とは、厳密には同じものではないと思われますが、対象との隔たり(距離)という意味では共通するものを感じる「-la」および「la*」の表現をみてみたいと思います。

・物語の「-la」
 この表現は、たとえば「昔々」ではじまるような物語によくみられる表現。例を挙げてみると……

 13)'Ike akula 'o ia…….   彼は見たんだとさ。
   見る     彼は

 14)Moe ihola 'o ia i laila.   彼はそこで眠ったんだとさ。

   眠る     彼は   そこで

 13)では、話し手から離れる方向(away)をあらわす「aku」、14)では下向き(down)をあらわす「iho」に、それぞれ「-la」がついています***。これらの「-la*」は、いずれも積極的な意味を担うことばではないのですが、語り手が物語と一定の距離をとっているニュアンスを添えています。その感じを出すために、「~だとさ」と訳してみましたが、自分のことを話すときに、まずこの言い方はしないことからも、「-la」に含まれる対象との距離感がなんとなくわかると思います。

・疑いの「la*」
 これは、先の物語の「-la」よりもさらに対象との距離があるというか、場合によってはちょっと突き放したような印象を与える表現です。たとえば、こんなふうに……
 
 15)He aha ke*ia?  これは何ですか?

 16)He aha la*.   さぁ、なんだろね。

 15)の「he aha…?」は「なんですか?」とたずねるときの言い方ですが、16)ではそれに答えるのではなく、問いを繰り返す仕方ではぐらかそうとしている……そんな印象のある受け答えですね。「さぁね(知らないよ)」という、積極的に関わろうとしない態度が「la*」にあらわれているわけです。このタイプの「la*」は「疑いのla*」という言い方もされますが、相手との距離という意味では、隔たりをあらわす「la*」と共通するところがあるように思われます。

 さて、今回の『ハワイ語のはなし』はいかがでしたでしょうか?「He aha la*~」(さぁどうだろね~)なんて答えが返ってきたらショックですが……ご感想など、熱烈お待ちしております!


*:「起こりつつあること」をあらわす「e+動詞+ana」は、話のポイントをどこに置くかで「まだ終わっていない」(未完)、「これからも続く」(未来)など、文脈によってニュアンスが違ってくる表現でもあります。また、同じように進行中であることをあらわす「ke+動詞+nei」が「現在」に限られるのに対して、「e+動詞+ana」は、現在、未来だけでなく、文脈によっては過去についても用いられます。
**:「E+動詞+ana」が未来の意味で用いられることが多いのは、「e」に含まれる未来(これから)のニュアンスと、「ana」の時間的・空間的な隔たり感(far)のためだと考えられます。
***:「Aku」「iho」は、それぞれ前の動詞が表す動きの方向をあらわす「方向詞」。「Aku」は「’ike」(みる)による眼差しが遠くへ向かうこと、「iho」は「moe」(眠る)動作が下向きであることをあらわしています。

参考文献
1)Elbert SH, Pukui MK: Hawaiian grammer. Honolulu, University of Hawaii Press, 2001, pp60-61, pp113-115
2)Kamana K, Wilson WH: Na* Kai 'Ewalu, Puke 1 Hou, 2012 Edition, Mokuna 1-14. Hilo, Hale Kuamo'o, 2012, pp121-122



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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。