『ハワイ語のはなし』(語順の基本2)

ハワイ語のはなし201(2019年9月配信)
「限定は前から、説明はうしろから」(2)


 単語ひとつひとつを調べても、なかなか連なりとしての意味がみえてこなかったりするハワイ語。ことばを並べるルールが日本語や英語とは異なるため
ですが、今回は、ハワイ語をサクサク読めるようになるためのちょっとしたコツを、キャッチフレーズ風にまとめてみたいと思います。


●定冠詞(類)は前から限定する

 定冠詞「ka」「ke」というと、「ka pua」(花)、「ke kanaka」(ひと)みたいに名詞を印すことばですが*、ここではその「限定する働き」に注目してみたいと思います。たとえば、「kau」(置く)といった動詞に定冠詞がつくと「ke kau」
(置くこと、存在)といった意味になるのは、定冠詞に輪郭を与える働き、つまり対象を限定する役割があるから。そして、そのあたりのことがよりはっきりわかるのが、「ke*ia」(これ)、「ku‘u」(私の大切な)といった「k-」ではじまる定冠詞類。たとえば「ke*ia pua」(この花)や「ku‘u lei」(私の大切なレイ)といったことばに含まれる対象を限定する感じに、定冠詞の意味合いのある「k-」の働きがあらわれています。


●説明はうしろから

 ハワイ語の並びが日本語と大きく異なる点のひとつが、この「説明はうしろから」という語順ルール。日本語の感覚でハワイ語を読んでしまうと、ときに意味を大きく取り違えてしまうことがあるのはそのためです。たとえば……

1) ka nui manu  鳥の群れ ※ka manu(鳥)

 「Nui」は「大きい、多い」といった意味で用いられる状態動詞ですが、ここでは定冠詞によって輪郭が与えられ、「たくさんいること(群れ)」を意味しています。そして、それに続く「manu」はなにかというと……そう、「ka nui」のうしろにあるということは「鳥の」と訳すべき「説明」ですね。これを日本語的に前から訳すと「大きな鳥」となり、まったく意味が違ってしまうので注意しましょう。もっとも、この手の勘違いは「説明はうしろから」と「定冠詞(類)は前から限定する」さえわかっていれば避けられるはず。ハワイ語にアプローチするときの一方法として、記憶にとどめておきたい大原則のひとつです。


●前から限定するか、うしろから説明するか

 前から限定する意味合いのある定冠詞(類)は、定冠詞であるがゆえに前にしか置けませんが、なかには「k-」の部分をとって後ろに置いたり、逆に「k-」を含むことばにすることで前に移動したり、なんてことができる場合があったりします。たとえば……

2)ko‘u aloha.  私のアロハ。

3) ke aloha o‘u.  私のアロハ。

 日本語だと「アロハ私の」とは言えませんが、ハワイ語ではこんなふうに前後を入れ替えることができます。いずれも「私の」と訳される「ko‘u」「o‘u」ですが、「ko‘u」には定冠詞「k-」が含まれるので「aloha」を前から限定し、定冠詞を含まない「o‘u」は「aloha」を後から説明するというわけです。
 ここで例に挙げた「ko‘u」「o‘u」(私の)のほかにも、「kou」「ou」(あなたの)、「kona」「ona」(彼の・彼女の)といった具合に、ハワイ語の所有代名詞には、すべて「k-」のあるものとないものが対になっています。このことと合わせて覚えておきたいのが、「~の」と訳されるハワイ語「o」の、定冠詞を含む形「ko」の使い方。これについても、「定冠詞は前から限定」「説明はうしろから」という基本は同じなので、合わせてみておきたいと思います。

4) ko ma*kou ka‘a.  私たちの車。

5) ke ka‘a o ma*kou.  私たちの車。

 「Ma*kou」(私たち)に「o」(~の)をそえた「o ma*kou」(私たちの)が、「ke ka‘a」をうしろから説明しているのが5)。一方、4)では「k-」を含む「ko ma*kou」(私たちの)が、「ka‘a」を限定すべく定冠詞の位置に置かれています。決して「ko ma*kou ke ka‘a」とならないのは、「ko ma*kou」の「ko」に「ka‘a」を限定する定
冠詞が含まれているから……なんだかパズルみたいですが、「ko」を「k-o」ととらえると理解しやすいと思います。 次に、ちょっとした応用例を挙げてみます。

6) ko ka hale la*nai.  家のベランダ。

7) ka la*nai o ka hale.  家のベランダ。

 「K-」が含まれることばが増えてとまどうかもですが、実は先の「ma*kou」(私たち)のところが「ka hale」に置き換えられているだけ。「家の」
「車の」みたいな感じで、「~の」をつけるともれなく所有形が作れるあたり、ハワイ語の「o」は日本語の「の」と似ているところがありますね。


●ルールがわかれば長い文も読める

 最後に、6)7)に修飾語を付け加えるなどした長い文にチャレンジしてみたいと思います。

8)ko ka hale la*nai nani.  家の美しいベランダ。

 6)に「nani」(美しい)を付け加えた文ですが、「la*nai」のうしろということはその説明なので、「美しいベランダ」となりますね。

9)ko kou hale nani la*nai.   あなたの美しい家のベランダ。

 これは、8)の「ka hale」(家)を「kou hale」(あなたの家)に置き換えたうえに、「nani」が「hale」を修飾する位置に移動したもの。ですが、これだとさすがに最初の「ko」の「k-」が「la*nai」の定冠詞であることがわかりにくいので、次のようにいうほうが自然かもしれません。

10) ka la*nai o kou hale nani.  
 あなたの美しい家のベランダ。

 なんだか頭の体操的な要素満載ですが、「前から限定する定冠詞」「説明はうしろから」のルールに慣れてくると、長く連なった文もだんだん読めるようになってくるはず。ぜひ、チャレンジしてみてください。


*:定冠詞の使い分けには、「k-」「e-」「a-」「o-」で始まることばには「ke」、それ以外は「ka」というおおまかなルールがあります。


*お知らせ* 今後のバックナンバーについては、過去のものも含め『隙間のりりーのハワイアンソングブック』にアップしていく予定です。
http://hiroesogo.blog.fc2.com/

※オキナ(声門閉鎖音)は「‘」、カハコー(長音記号)は伸ばす音の後ろに「*」をつけています。ハワイ語は、とりあえずローマ字読みすることが可能です。

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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。