「ハワイ語のはなし202」所有のことばの覚え方

ハワイ語のはなし202(2019年10月配信)
所有のことばの覚え方


 とにかく種類が多く、使い方も訳し方も複雑で、これで挫折するひとも多いのでは……と思ったりするハワイ語の所有形。ですが、仕組みそのものは思いのほかシステマチックだったりして、順序立てて理解すれば、自ずと使い方もわかってくるようなところがあったりします。今回は、そんなハワイ語の所有形にアプローチするコツを探りながら、ハワイ語独特の用例もご紹介したいと思います。


●「~の」にあたる「o」と「a」

 日本語では「私-の」「花-の」「山-の」みたいな仕方で、「~の」を付けるともれなく所有をあらわすことばになりますが、まず押さえておきたいのが、この「の」にあたるのがハワイ語では「o」と「a」だということ。さっそく、どんな風に使うのかをみてみると……

1)ka iwi o ka manu  鳥の骨

2)ke keiki a la*ua  カップルの子ども

 1)では「ka manu」(鳥)の前に「o」が置かれ、「ka iwi」(骨)を後ろから説明する語順になっています。このときの「o」は、「ka iwi」と「ka manu」の関係(骨が鳥のものであること)をあらわしているともいえます。このあたりのことばの連なり方は2)も同じですが、2)では「o」ではなく「a」が用いられているのは、「ke keiki」(子ども)と「la*ua」(彼ら二人、ここでは「カップル」)の関係が、1)とは異なると感じられているから。どういうことかというと……鳥にとっての自分の骨は、いうまでもなく自ずと備わっているもの。なので、骨を持ったり持たなかったりといった意志を働かせる余地はありません。一方、カップルは、(授かるかどうかはともかく)二人の意志のもとで子どもを持つか否かの選択ができます。このあたりのことをざっくりまとめると、「o」による所有関係は「受動的」、「a」によるそれは「能動的」であるともいえます。ハワイ語の所有のことばは、すべてこの「o」と「a」の違いをふまえて使い分けられるので、「なぜここは『o』ではなく『a』なんだろう?」みたいな仕方で読み込むと、その意味内容を具体的にイメージする助けになったりもします。


●前から限定する所有のことば

 次に、後ろから説明するのではなく、前から限定する所有のことばをみてみたいと思います。「前から限定する」といえば定冠詞「ka」「ke」の役割*。というわけで、後ろではなく前に置かれる所有のことばは、定冠詞「k-」を含んだ形になります。そのあたりのことを、まずは1)2)を書き換えることで確認してみます。

3)ko ka manu iwi  鳥の骨

4)ka* la*ua keiki  カップルの子ども

 なんでこうなるの!?って感じかもですが、細かくみてみると……3)では「k-o ka manu」、4)では「k-a* la*ua」と、それぞれ1)2)では後ろから説明することばとして用いられていた所有のことばに、定冠詞の意味合いのある「k-」が合体していることがわかります。「~の」という意味で用いようとすることばの前に「ko」もしくは「ka*」を付け加えるということでもいいのですが、「k-」に定冠詞の意味合いがあることをふまえたうえで、できれば所有のことばを前後させるときの要領も理解しておきましょう。


●「k-所有形」が単独で用いられる場合

 ここまで、「o」「a」あるいは「ko」「ka*」で所有のことばを作る仕方をみてきました。次に、もとから「o」や「a」を含んでいる所有のことば、いわゆる所有代名詞を取り上げたいと思います。まずは、「k-」ではじまる所有形から……

5)私の  ko'u  ka'u    

6)あなたの  kou  ka*u  

7)彼の/彼女の  kona  ka*na

 そして、それぞれから「k-」をとると、後ろから説明するときの所有のことばになります。

8)私の  o'u  a'u    

9)あなたの  ou  a*u  

10)彼の/彼女の  ona  a*na

 こんなふうに、ハワイ語の所有代名詞は「o 所有形」「a 所有形」があるうえに、「k-」のあるなしの区別もあってやたらと数が多いのですが、整理してみると、仕組みはそれほど複雑ではないことがわかります。しかも、「k-」のある所有のことばは前から、ないものは後ろからというルールだけ覚えておけばなんとかなります。たとえば、「私の子ども」「私の父」については、それぞれ次の2通りの言い方が可能です。

[私の父]11)ko'u makuaka*ne

     12)ka makuaka*ne o'u

[私の子ども] 13)ka'u keiki

        14)ke keiki a'u

 同じ家族でも、父には「o 所有形」の「ko'u」と「o'u」、子どもには「a 所有形」である「ka'u」と「a'u」が用いられています。ここで「o」と「a」の使い分けをいま一度確認しておくと……親は選べない(受動的)ので「o 所有形」、子どもを持つか持たないかは選べる(能動的)ので「a 所有形」というわけですね。


●ハワイ語独特の所有形の使い方

 最後に、ハワイ語独特の所有形の使い方、「~を持っている」という意味で用いられる文型をご紹介します。 

15)He keiki ka'u. 私は子どもを持っています。

 まず、ここでの「ka'u」は「ka'u mea」(私のもの)という意味で用いられていることに注意してください。そして、文型的には「he keiki」(子ども)と「ka'u」(私のもの)がイコールで結ばれており、意味的には「子どもは私のものである」、つまり「私は子どもを持っています」(私には子どもがある)となります。こんなふうに、持っているという意味で所有のことばが用いられるのは、ハワイ語には「所有する」という動詞、英語の「have動詞」にあたるものがないため。そして、この「~を持っている」という文では、15)のように、定冠詞ではなく不定冠詞「he」が用いられることにも注意しましょう**。
 次に、15)を否定文にしてみます。

16)'A'ohe a'u keiki.私には子どもがいません。

 あれっ!?15)では「k-」所有形の「ka'u」が用いられていたところが、16)では「a'u」と「k-」のない形になっています。なぜかというと……そう、「'a'ohe」は「'a'ole」(~ない)と「he」(不定冠詞)が合体したものであり、冠詞が二つ続くことはないことから、「ka'u」から「k-」が落ちて「a'u」になるというわけです。

 あれもこれもといっきにまとめてしまったので、「He ni*nau ka'u」(I have a question、私は質問があります)というかたもおられるでしょうか……ご質問のメールもお待ちしております。


*:定冠詞の使い分けには、「k-」「e-」「a-」「o-」で始まることばには「ke」、それ以外は「ka」
というおおまかなルールがあります。
**:定冠詞「ka/ke」が限定することばであるのに対して、不定冠詞「he」には、「~の種類に属する」ことを示す働き、いわゆるカテゴライズの意味合いがあります。たとえば、「ke aloha」だと「愛、恋人、深い思い、共感、やさしさ」といった訳語があてられますが、「he aloha」には「愛というもの、愛すべきひと」といったニュアンスがあります。

*お知らせ*
 今後のバックナンバーについては、過去のものも含め『隙間のりりーのハワイアンソングブック』にアップしていく予定です。
http://hiroesogo.blog.fc2.com/
 
※オキナ(声門閉鎖音)は「‘」、カハコー(長音記号)は伸ばす音の後ろに「*」をつけています。ハワイ語は、とりあえずローマ字読みすることが可能です。
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。