ハワイ語のはなし205(2020年1月配信)「‘O」と「He」の違いに注目!してみる
ハワイ語の定冠詞「ka/ke」と不定冠詞「he」の違いを例文で解説したミニ講座です。
「ハワイ語の話205」と合わせてぜひご覧ください。 ハワイ語文法がなんとなくわかってきたひとでも、ハワイ語作文となるとハードルが高い……おそらく、そんな感覚の方が多いのではないかと思います。ですが、シンプルな説明文、たとえば自己紹介のようなものだと、意外と簡単。そう、「私の名前は○○です」「私は先生です」みたいな、いわゆる「である文」ですね。ハワイ語では、このタイプの文が2種類あるのですが、その違いを確認しながら、最後に少し長い作文にチャレンジしてみたいと思います。
●ハワイ語には2種類の「である文」がある
まずは、私自身の自己紹介文から。前回の『ハワイ語の話』では「編集者(ka luna ho‘oponopono)」としましたが、(ハワイ語の)先生でもあるということで、今回は「ke kumu a‘o」を使ってみたいと思います*。
1)‘O Hiroe ko‘u inoa. 私の名前はHiroeです。
2)He kumu a‘o au. 私は教えるひとです。
ko‘u(私の)、ka inoa(名前)、ke kumu a‘o(教えるひと)、au(私)
1)2)それぞれのハワイ語の並びをみてみると、1)「Hiroe 私の名前」、2)「教えるひと 私」となっていて、いずれも日本語とは前後が逆になっていることがわかります。こんなふうに、ハワイ語では「述語(~である)」が先にきて、「主語」が後に続くのが基本の語順。このことを押さえておくと、「である文」ではない次のような文も、述語が先という同じルールにのっとっていることがわかります。
3)Noho au ma Osaka. 私は大阪に住んでいます。
Noho(住む、ひとところにとどまる)、ma Osaka(大阪に)
もっとも問題は、日本語では同じ「である文」であるところを、ハワイ語では「‘o」ではじまるものと「he」ではじまるものが使い分けられるということ。その微妙なニュアンスを確認するために、さらに別の例文を挙げてみたいと思います。
●強調の「‘o」、輪郭のない「he」
ハワイ語の「である文」には、「‘o」と「he」の使い分けがある……にもかかわらず、「‘o」も「he」も、積極的に訳されることばではなかったりします。えぇっ!?って感じですが、それでも、それぞれにある役割を担ってはいます。そのあたりを、まずは「‘o」からみてみると……
4)He kumu au. 私は先生です。
5)‘O au ke kumu. 先生は私です/私が先生です。
4)は単に私の属性(なにをするひとなのか、どういう種類のひとなのか)を述べているだけ。一方、5)では、「先生は(ほかの誰でもないこの)私なんですよ」と、私をことさら強調する文になっています。このあたりの違いは、4)と5)の訳文にもあらわれていると思うのですが、日本語の「私は」と「私が」の違いといってもいいかもしれません。
ハワイ語に則して説明すると、4)の「au」に「‘o」を付けて文頭に移動したものが5)ともいえます。そして、5)では「he kumu」(先生という種類のひと)ではなく、「ke kumu」(その場で先生として存在するひと)でなければならないので「ke kumu」となります。そう、ものごとの輪郭をハッキリさせるには、「ka/ke」(定冠詞)を使わないとダメなんですね**。一方、漠然と「種類(カテゴリー)」を示すのが、「不定冠詞」と呼ばれる「he」。そう考えると、得体の知れない「he」のネーミングも、その性格をうまくいいあてていることがわかります。
●長文の作文にチャレンジ!
最後に、今回たどってみた二つの「である文」で、ハワイの島を紹介する文章を作ってみたいと思います。たとえば、オアフ島の地図あたりを「この島は」(ke*ia mokupuni)と指し示しながら説明している、そんな場面をイメージしてみてください。
6)‘O O‘ahu ke*ia mokupuni.
この島はオアフ島です。
7) ‘O Honolulu ke ku*lanakauhale.
(その島の)街といえばホノルルです。
8)He melemele ka waiho‘olu‘u no O‘ahu.
オアフの(ために選ばれた)色は黄色です。
9)He lei ilima kona lei.
そのレイ(として知られるの)はイリマのレイです。
10)‘O Ka‘ala ke kuahiwi nani.
(そこにある)美しい山といえばカアラです。
ke*ia(この)、ka mokupuni(島)、ke ku*lanakauhale(街、町)、ka melemele(黄色)、ka waiho‘olu‘u(色)、no(~のための)、ka lei ilima(イリマのレイ)、kona(彼の、彼女の、それの)、ke kuahiwi nani(美しい山)
いかがでしょう?こんなふうに、「‘o」と「he」ではじまる文型だけで、島を紹介する文章が作れたりするんですね。ハワイのほかの島々の紹介文も、単語を入れ替えるだけで作文できそうです。ぜひ、チャレンジしてみてください。
*:先生一般を表すハワイ語は「ke kumu」で、「ke kumu hula」(フラの先生)、「ke kumu kula」(学校の先生)みたいな仕方で用いられますが、ここでは漠然と「教えるひと」という意味で、「ke kumu a'o」を使ってみました。
**:定冠詞の使い分けには、「k-」「e-」「a-」「o-」で始まることばには「ke」、それ以外は「ka」というおおまかなルールがあります。
※オキナ(声門閉鎖音)は「‘」、カハコー(長音記号)は伸ばす音の後ろに「*」をつけています。ハワイ語は、とりあえずローマ字読みすることが可能です。
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