「フラダンサーの~」なんて看板に、ほとんど意味がないくらいフラのステージに縁がない私ですが、先日、1年ぶりにステージに立つ機会をいただきました。しかも、会場は日本で一番ハワイに近い場所……といっても関西空港ですが(笑)、ここから世界につながってるんだなぁと思うだけでハレの気分にさせられる、あの空港独特の非日常感だけは存分に楽しめたかなと思います。ちなみに、「空港」にあたるハワイ語は「kahua mokulele」。「Mokulele」(飛行機)のための「kahua」(グラウンド)という、比較的近年になってからの造語のようですが、今回はこの「mokulele」を手がかりに、いくつかのハワイ語をたどってみたいと思います。 Mokuleleの「lele」は、「ノミ」(’uku)が「跳ぶ」(lele)が語源とされる「’ukulele」(ウクレレ)に含まれるものと同じ。飛行機が「飛ぶ」のも、ノミが「跳ぶ」のも音的に同じなのは日本語と似てますね。一方、「moku」はもともと「船」をあらわすハワイ語。「飛ぶ船」といえば「飛行船」なんてのもありますが、大勢のひとやモノを運ぶ乗り物という意味で、同じことばが用いられたのではないかと思われます。 ところで「moku」には、「船」の語源だといわれているもうひとつの意味があります。そう、ハワイ島が「moku o Keawe」(Keawe王で名高い島)なんて呼ばれるときの「島」が「moku」なんですね。なんで船が島なのか!?って感じですが、その昔、ハワイのひとびとが、船を島のように眺めたことに由来するようです。水平線にポツンと見えはじめた点が、少しずつ大きくなっていく不思議な光景……それは、ハワイのひとたちがはじめてみた、ヨーロッパの大きな帆船でした*。移動する島という発想が素晴らしすぎますが、そこには初体験ならではの感動と驚きがあったものと思われます。18世紀末にハワイを訪れたキャプテン・クックが、ハワイの四大神のひとつ、Lonoと間違われたというエピソードも、船を島だと思って眺める素朴さなしにはありえなかったかもしれません。しかも、そんな「不思議の島」のイメージの原型ともいえる、ハワイに古くから伝わる神話があったりするんですね。先のLonoと同じく四大神として挙げられる、Ka*neとKanaloaが暮らしていた場所、その名も「Kane-huna-moku」(Kaneの隠された島)にまつわる物語です**。 Kane-huna-mokuは、「ただよう雲の上」、あるいは「遠い彼方にある神聖なところ」に、永遠に続く自然の恵みとともにあると語られる謎の島。そんな、なんとなく「どこにもない場所」を思わせるKane-huna-mokuですが、神々によって隠されているだけで、確かにあるとされるのがまた不思議なところ。しかも、その存在がそれと示されるシチュエーションが、神話のなかでは具体的にイメージされているようなんですね。たとえば、夜明けや日没のトワイライトに包まれる時間帯に、遠い水平線のあたりで赤々と燃える光とともにあらわれるのが、Kane-huna-mokuであるといった具合に……。そう、あの誰もが息をのむひととき、真っ赤な太陽が、海と空とが出合う際にとどまる一瞬の光景ですね。そのあまりの美しさに、古代のハワイのひとびとは神的な存在を強く感じ、そこに神々の意志があらわれていると確信したのかもしれません。そんなふうにたどると、ますます神秘的な印象のKane-huna-mokuなのですが、Ka*neと直接つながりのある存在、たとえば「Kane of the thunder(雷のKane)」や「Kane of the water of life(命の水のKane)」(雨?)、「Kane who shakes the earth(大地を揺らすKane)」(地震?)といった自然現象を思わせる精霊たちもそこには暮らしているとされ、「隠された」「秘密の」(huna)島といいながら、実は結構身近なところで感じられていたのではないかと思ったりもします。だとすると、つまり「Ka*ne」とはあらゆる自然現象そのものであり、人間にとっては命の源であると同時にときに災いでもあるような、途方もなく大きな力を指し示すことばだったりするのかも……。ハワイを訪れると、日々、雨や風の訪れを感じつつ流れる時間がそこにあるのを感じるのですが、少なくとも古代のハワイのひとびとは、わたしたちには想像できないほど強烈に、自然のあらわれとともに生きる感覚を持ちながら暮らしていたのではないかと想像されます。 空と海とのはざまにあって、苦しみも死もなく神々が無限の喜びを享受しているとも語られるKane-huna-moku。一方、「moku」を含むだけでそれ以上の共通点はなさそうなkahua mokulele(空港)……というわけで、はからずも無理やり感満載の展開になってしまいましたが、ここではない世界への入り口、そしてKane-huna-mokuがあるまさにその境目を飛び立つ場所という意味で、空港は現代のKane-huna-mokuかもしれない(?)というあたりで締めくくっておきたいと思います。
1)Beckwith M: Hawaiian Mythology. Honolulu, University of Hawai’i Press, p60, pp67-69, 1970
おっしゃる通りNorth Hilo, South Hilo, North Kohala, South Kohalaと言います。でもNorth Kona, South Konaも言うのであなたの言い分だと9区分に分けるのですか?そんな分け方聞いたことないです。 それとMokuは動詞ではありません。切るの動詞はʻoki, ʻako, kaha等です。
コメント
Aki
2020/06/14 URL 編集
隙間のりりー
ご指摘ありがとうございます。
書き間違えてますね。Hiloが正解です。
Hiloをサウスヒロとノースヒロに分けて描こうとしたのだと思います。でもそれなら、コハラも二つに分けて、全体として9に分けるべきなので、訂正を入れたいと思います。
2020/06/14 URL 編集
Aki
それとMokuは動詞ではありません。切るの動詞はʻoki, ʻako, kaha等です。
2020/06/15 URL 編集
隙間のりりー
重ねてコメントいただきありがとうございます。
伝統的な地域区分とは違いますが,統計をとったりする場合には9つに分ける場合もあるようです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%AF%E3%82%A4%E5%B3%B6
「moku」の品詞ですが,「to be cut」の意味で「stative verb」(状態動詞)と呼ばれます。
2020/06/15 URL 編集
Aki
2020/06/17 URL 編集
隙間のりりー
いろいろご意見ありがとうございます。よかったら、どちらのかたなのか、非公開メッセージでも結構ですので、名のっていただけませんでしょうか。
せっかくご助言いただきましたので、ぜひよろしくお願いいたします。
2020/06/17 URL 編集