Maui Girl

Maui Girl





 ぼくはマウイのかわいいあの子が好きなんだ
 彼女はWaikapu*に住んでてね
 頬はバラ色、歯も真珠みたいに輝いて
 髪は愛らしい栗色なんだ……

 大好きな女性のことをだれかに話したくてしかたない……そんな幸せいっぱいな気持ちが軽快なメロディにのせて歌われる『Maui Girl』。「hapa haole song」と呼ばれるこの歌は、ほとんど英語で歌われているのですが、内容の核心の部分には、なぜかハワイ語が登場します。たとえば、こんなふうに……。

 彼女はウエストなんかもすっごく細いんだけど
 お腹(’o*pu*)が大きくなりすぎちゃってさ

 あれあれ、なにが起こってるんでしょう―そして、この二人を取り巻く微妙な状況は、歌の繰り返しの部分(hui)でそれとなく明かされます。

 僕の愛を君に、ua hiki aku no*(もう受け止めてるわ)
 そして、君の愛を僕に、ua pe*la* no*(もうそうなってるわ)
 ママにいっちゃだめだよ、a kulikuli(Shut up!)
 あ~でも、彼女はパパに言っちゃうんだろうな、a luliluli(ぜったいダメだよ)**
 まったく、僕はどうしたらいいっていうの***

 この歌については、1892年には早くも印刷物のなかに記録がみられるようで、hapa haole songのなかでも古くから歌い継がれてきたもののようです。それにしても、100年以上前に作られたとは思えないこの内容を、はたして当時のハワイのひとびとがどんなふうに受け止めていたのかも気になるところです。道徳的にどうとらえられていたのかはわかりませんが、とびきりおしゃれで、なんとなく新しい時代の空気を感じさせる、そんな歌だったのではないかと想像しています。

*:「hapa haole」の文字通りの意味は「half white」で、ハワイ人と白人の混血であることを意味します。音楽の領域では、1900年代後半を中心に作られたハワイアンソングのうち、英語をベースに数語のハワイ語を散りばめた歌詞が、当時,米国ではやりだったpopsのメロディで歌われたものを指します。
**:「luliluli」は「yes」あるいは「no」の意味で首を振る様子を表わすことば。
***:文字通りの意味は「問題は大きい(多い)」(nuinui pilikia)。

文献
Kanaheke: Hawaiian Music And Musicians-An Ilustrated History. The University Press Of Hawaii, 1979
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。