Punalu'u

Punalu'u





Uluwehi Guerrero


 花々の香りに満ちたPunalu'u。
 そこはユリやヒナノの香りが漂っていて、
 ずっと胸に抱きしめていたい、そんな大切な場所。

 その眺めはホントウに美しい。
 寄せては返す波の音が、まるでささやくように、
  ゆったり遠くから聞こえてくる。

 Punalu'uは、オアフ島の北東部の町、Kahanaにある、Ko'olau山脈を背に広がる海辺の名前です。美しい花の香りと海のささやきがゆったりと聞こえる風景とともによみがえる、ある思いがあるのでしょうか。「胸に(i ka poli)抱きしめる」というフレーズが、歌詞に込められているであろう秘めた思いがあることを感じさせます。ユリ(li*lia)やヒナノ(hinano)といった、軽いトランス状態を誘うほど強く香る花が歌われていて、そこにはおそらく、ある愛の物語があるであろうことも連想させますが、このあと、その物語のイメージをさらに膨らませてくれる歌詞が続きます。

 ナウパカの花はホントウに美しい。
 それは海辺を離れることのない花。
 片側しかない、あの(なんともいえない)花びらの形……。

 ナウパカ(naupaka)は、ハワイの海岸近くにみられる、がっしりしたイメージのある低木の名前です。その白い花の半分ひきちぎられたような形状や、同じ種類でありながら花も実も葉の色も異なるナウパカが山の中腹辺りに生えていることが、ハワイのひとびとのイマジネーションをかきたて様々な物語を生み出してきた、そんな植物のようです。
 ナウパカをめぐる物語のひとつに、火の神Peleによって引き裂かれた恋人たち、IkaikaとMomiの物語があります。それぞれに自分が不完全であると感じてお互いを求め合う二人は、いつも一緒にいたいと願うあまりPeleに嫉妬され、Ikaikaは海辺から離れられなくなり、Momiは山へ追いやられ、二度と会えなくなってしまった―そんなストーリーです。どんな関係も節度をもって距離を保つことが大切ということなんでしょうか……それはともかく、片割れを失ったようなナウパカの花をながめながら、自分が失った「あなた」のことを思い起こしているような歌詞が続きます。

 (このナウパカの花のように)あなたも一人なのかしら。
 Punalu’uを眺めるとついそんなことを思ってしまう。
 風がやさしく吹いている、この気持ちのいい場所で。

 『Punalu’u』のどこか淡々としたメロディの雰囲気は、単に切ないだけでなく、別れも含めたあらゆる状況をすべて受け入れ、心の中で昇華している……そんな印象があります。というか、歌で表現するということ自体が、行き場のない思いにある形を与えることで心の均衡を保つ、そんな働きがあるのかもしれません。


Composed by Irmgard Aluli and Kawena Pukui
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。