Aloha Hāwaiʻi Kuʻu One Hānau

Aloha Hāwaiʻi Kuʻu One Hānau





Natalie Ai Kamauu


 Aloha Hāwaiʻi kuʻu one hānau
 Mai Hāwaiʻi kua uli a ke one o Niʻihau
 He lei momi ʻoe
 He wehi no nā lani

 愛すべきHawaiʻi、私が生を受けた場所。
 緑生い茂るハワイ島からニイハウ島にいたるまで、
 島々は真珠のレイのように連なっている。
 そう、まるで代々ハワイを守り治めてきた偉大なひとびとを飾るように。

 真珠のレイのように連なる美しい島……地図をみると、太平洋の真ん中に浮かぶハワイの島々は、たしかにゆるやかな弧を描くようにみえますね。「偉大なひとびと」と訳した「na* lani」は、「天(空)」という文字通りの意味とともに、比喩的には「神的存在」「リーダー」といった、ひとの上に立つすぐれた存在を表すことばです。「na*」(複数の定冠詞)がついているあたり、いまに続く代々の先祖たちをたたえる気持ちが含まれているように感じられますが、そんな、遠い過去から現在まで連綿と続いてきた、ハワイのひとびとの歴史やつながりを語ることばがこのあと続きます。

 Ōhāhā ka ulu ʻana o ke kalo e
 He ʻai kamahaʻo o nā Hawaiʻi
 E ola mau nā pulapula
 O Hāloa e

 すくすくと育つカロ。
 それはハワイのひとびとに与えられたすばらしき食べ物。
 Hāloaの芽生えが、永遠に命をつないでいきますように……。

 この「Ke kalo」(タロイモ)の一節の背景には、ハワイの創世神話『Kumulipo』に描かれている、はじまりの人間をめぐる神話があります。天なる父「Wakea」が、母なる大地「Papa」を雨でうるおし、そこにKe kaloが芽吹いて、のちに続くひとびとの食料になった……そんな物語です。最初に生まれたKe kaloは、植物ではありますが「Ha*loa」という名前で呼ばれ、その後、同じ両親のもとに人間として生まれた弟も、兄と同じ名前の「Ha*loa」と名づけられる……つまり、食料であるKe kaloとそれを食べる人間とが同列に語られるわけですね。この驚くべき物語の地平においては、植物であるHa*loaの種子(pulapula)は、すなわち人間の子孫ということにもなります。そんな、ハワイのひとびとの自然観というか世界観から、気が遠くなるほど深いところでことばが紡がれているのが、『Aloha Ha*wai'i Ku'u One Ha*nau』なのだと思います。

 ʻO ka wailele hanini iho nei
 Mai luna a i lalo
 I nā pali kiʻekiʻe
 He waiwai nui
 Ka wai ola a Kāne

 流れ落ちる滝の水といえば、
 天から下界へ(ともたらされる)。
 (そして)あのそびえ立つ山のいただきにも……。
 偉大なる水、それはKāneの力そのものである命の源。
 
 はじまりの人間Ha*loaの話は、Ke kaloが豊かな水でもって栽培されることから、自ずと豊かな水の存在を連想させるのですが、この一節では、命の源としての水が、ハワイの四大神のひとつである「Ka*ne」**信仰とともにダイレクトに語られます。Ka*neは「procreation」(生殖、命の再生産)を司る神とされ、具体的には雨や水にまつわる自然現象としての現れを持ちます。そう、先に紹介したHa*loaの父であるWakeaが、大地にふる雨であったように……というわけで、ハワイ語の世界では、雨にまつわることばに「ka*ne」を含むことばが多かったりします***。また、命にまつわる神話が、「Ka wai ola a Ka*ne」(The water of Ka*ne)の名の下に語られてもきたようです。

 Hāwaiʻi ka ʻī o nā ʻaina nani e
 Hoʻōla ʻia e ke Akua mana loa
 E ola mau ka lāhui
 I ka maluhia

 Hāwaiʻi、数ある美しい土地のなかでも、とびきりすばらしいこの島。
 (それは)大いなる神の力によって守られた場所。
 (この場所で)ひとびとが永遠に、こころ穏やかに暮らせますよう……。

 この最後のフレーズに登場するka 'i*の「 'i*」は、ハワイの偉大な王族の名前である「Kalaninui 'I*amamo」のことを指してもいるようで、先に少し言及した『Kumulipo』が、この人物に捧げられたものでもあるくらい、ハワイ人のルーツを語るうえで重要な意味を持つ存在のようです。そして、この歌のなかで、通常「Hawai'i」と発音されるハワイが、「Ha*wai'i」と「Ha*」を含む仕方での表記になっているのは、人間のはじまりの物語に登場する二人のHa*loaの「Ha*」、そして、「生命」や「呼吸」を表すハワイ語の「ha*」が意識されているためだといいます。こんなふうに、自然とともに、というか自然の一部分として、ともになにかとてつもなく大きな力に抱かれていることへの深い自覚のもと、生かされていることへの祈りにも近い気持ちが、静かに、でも力強く語られている―そんな、『Aloha Ha*wai'i Ku'u One Ha*nau』は、あまりにあたりまえすぎて見過ごされがちな大切なことに気づかせてくれる、奇跡にも思われる一曲なのです。


*:タロイモの蔓を意味するハワイ語。
**:Ka*neは、男性を意味する「kane」の語源でもあります。
***:Ka(ne)-poha-ka’a:「pohaku(石)」を「ka’a(転がす)」ほどの激しい雨、Kane-hekili:「hekiki(弱く細かい雨)とともにやってくる雷、など。いずれも、ハワイ島キラウエアに住むとされる火の神Peleの兄弟でもあるとされることは、Peleの物語が、なによりも自然のエネルギーを語るものであることを示していると思われます。

参考文献
Beckwith MA: Hawaian Mythology. Honolulu, University of Hawai'i Press, 1970
Beckwith MA: The Kumulipo. Honolulu, University of Hawai'i Press, 1951
Pukui MK, Handy ES: The Polynesian Family System in Ka'u. Hawai'i Rutland, Vermont: Charles E. Tuttle, 1958

composed by Kawaikapuokalani K.Hewitt
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。