Kamali'i O Ka Po*

Kamali'i O Ka Po*






Ho'ike Night at Kamehameha Schools for Pa'a (Performing Arts Academy)






Brain Kamalani Kia



 夜(po*)の子ども(kamali'i)よ、昼(ao)の子どもよ。
 私はここにいる(そして、世界を目の前にしている)。
 Wa*keaは天(lani)に、Papaは大地(honua)に。
 そう、上に(luna)あるべきものは上に、下に(lalo)あるべきものは下に……。

 いきなり夜の子ども(kamali'i o ka po*)ってなんだ?って感じの『Kamali'i O Ka Po*』。ですが、これに続く「Wa*kea」と「Papa」がなんなのかがわかってくると、奇妙に思われることばの連なりの意味が見えきます。そう、この歌に描かれているのは、ハワイの創世神話、『Kumulipo』に登場する「この世界」の誕生と、それに続く「はじまりの人間」をめぐる物語なんですね。父なる天「Wa*kea」が降らせる雨によって、母なる大地「Papa」がうるをされ、そこに、人類の起源ともいえる生命が誕生する……それにしてもの「夜の子ども」(kamali'i o ka po*)と「昼の子ども」(kamali'i o ke ao)なのですが、これについては、通常「子ども」を意味する「kamali'i」を、その後成長していくなにものかの「はじまり」と考えてみたいと思います。それは、深い深い闇としかいいようのないものしか存在しなかった(というか、存在と非存在の区別もなかった)ころに現れた、「夜(po*)」と「昼(ao)」の境目(あるいは秩序)のはじまりで、それに続いて現れたのが天と地の輪郭だった―そうやって、(物理的な)上も下もなかった世界に、まるで子ども(kamali'i)が生まれるような未来をともなって、この世界は生まれたのでありました……。

 夜(po*)の子ども(kamali'i)よ、昼(ao)の子どもよ。  
 古代の神(akua)はある限られた手だてでもって自らを現す。
 そして、その英知を捉え伝えていくのがLihau'ula(kahuna)。

 ここに歌われている内容は、ハワイに古くから伝わることわざ的なフレーズから引用されたものです。人間を越えた大きな存在からやってくる英知の声を聞き届け、それを人間に伝えていく……そんな特別な任務を担う存在が、古代からハワイのひとびとが「kahuna」と呼んできた聖職者であることがわかります。

 夜(po*)の子ども(kamali'i)よ、昼(ao)の子どもよ。
 Ho'oho*ku*okalaniは(特別な)女性。
 (そう、彼女から生まれたのが)タロイモのHa*loa、そして、人間であるHa*loa。

  Ho'oho*ku*okalaniは、先に紹介したWakeaとPapaから生まれた女性です。そして、彼女からまるで兄弟のように生まれたのが、タロイモとして生を受けたHa*loaと、はじまりの人間的な存在である(同じ名前の)Ha*loaなんですね。つまり、この神話には、人間と人間がそれによって生命をつないでいる自然のめぐみが、同じルーツでもって語られている……ハワイのひとびとの伝統的な自然観というか世界観が現れている、シンプルだけれども感動的な物語だと思います

 夜(po*)の子ども(kamali'i)よ、昼(ao)の子どもよ。
 そう、あなたにとってその場所は、魚の体の間にある部分のようなもの。
 (ところで、その魚の)どこが頭で、どこがしっぽなのか……。

 おそらく、なにかがたとえられているだろうことは察しがつきますが、それがなんなのかは、この部分だけを読んでも謎だったりします。なので、ここでは試みとして、この歌が収録されているCDの歌詞カードにある、歌詞には直接含まれていない部分の英語訳、「すべてが正しい場所にあるということ、これこそが責任(kuleana)」が意味するところをあわせて考えてみたいと思います。
 ハワイ語の「kuleana(責任)」には、「portion(分け持たれた部分)」という意味があって、語源的には、自分がそのケアを引き受けるべく分け持つ土地に対する責任というところからきているようです。だとすると、あなたにとっての「その場所」、魚の間にあるその「部分」とは、あなたと呼ばれているだれかにとってのkuleanaだということになると思われます。そして、その頭としっぽがどこかわからないというのは、おそらく、はじまりもおわりもなくはてしなく続く連なりの中にあって、その間(いまここ)で責任を担うのがあなたであるということだと思うんですね。そして、もうひとつ重要なのは、このあなたは、1番で「私はここにいます」と宣言しながら、世界の誕生に立ち会っている私のことでもあるはずだということ……『Kamali'i O Ka Po*』は、人間が存在するからこそあるといえる「この世界」に対するわれわれの責任を、強靭かつしなやかな精神によって徹底的に考え抜こうとする、そんな、世界への態度表明ともいえるような歌なのでした。

*:WakeaとPapa、そしてHa*loaの誕生をめぐる物語には複数のバージョンがあって、Ho'oho*ku*okalaniを介さずに、WakeaとPapaからダイレクトにHa*loaが生まれたとするものもあります。

参考文献
Beckwith M: Hawaiian Mythology. Honolulu, University of Hawaii Press, 1970
Pukui MK: O*lelo No'eau, Hawaiian Proverbs and Poetical Sayings. Honolulu, Bishop Museum Press, 2008

composed by Kawaikapuokalani F Hewett
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。