Wa*ika*huli

Wa*ika*huli





Kuana Tores


 (その花は)山の霧のなかで伸びていく。 
 雲のかかるその山のなかで。
 ほんとうに美しい(maoli)花
 すずしさ(ke anu)をともにする、私の大切な友(hoa'alo)よ。

 タイトルになっている「wa*ika*huli」は、北米中部原産、デイジーに近いキク科の一年草。男性が作った歌でもあり、wa*ika*huliにたとえられているのは彼が愛する女性かと思いきや、作詞作曲を手がけたKuana Toresさんによると、『Wa*ika*huli』は、Kuanaさんが大好きなある男性のために作られたものだといいます。その彼もまた、wa*ika*huliと同じように、遠く離れた土地にルーツを持っている*……Kuanaさんの気持ちをとらえて離さない人物についてわかるのはこれだけですが、「ke anu」(すずしさ)をともにする友人(hoa'alo)というところから、一緒にいると心地よくいい時間が過ごせる、そんな二人の関係が見えてくるように思います。
 それにしても不思議なのは、これに続いて歌われるのが、wa*ika*huliではなくlehuaの花であること。ともかく、歌詞をたどってみると……

 山の鳥がyesと答える
 レフアの森を大切にしようと。
 レフアのいい香りのする花の蜜は、ほんとうにいいものだ。

 愛する思いが立ち上がってくる。
 この思いをしっかりと胸に抱いて。
(ハワイの)繊細な雨は、 ベネチアの水に勝るとも劣らない。

 「lehua」といえば、ハワイの固有種として、神話や伝説にも登場する植物です。たとえば、火の神Peleの物語では、荒れ狂うPeleにのみ込まれるlehuaの森が、伝説の美女La*ieikawaiの物語では、彼女を取り囲むlehuaの花と、花に誘われて集まってくる鳥たちの姿が美しく描かれています。Peleの物語は、燃える大地とともにあるハワイの自然の厳しさを、La*ieikawaiのほうは、人間に恵みをもたらす自然の豊かさを、それぞれ象徴しているように思われるのですが、そんなハワイの自然とイコールであるようなlehuaのイメージでもって歌詞を読むと、美しいメロディにのせて、Kuanaさんのハワイへの思いがあふれてくるように感じられます。
 一方、ハワイにしっかり根を下ろしていても、外来種であるwa*ika*huliは、lehuaと同じように扱うことはできないのかもしれません。というか、もしかすると、どこにルーツがあるかを大切にすることが、そのひとに対する敬意の表明だったりするのかも……そのあたりの微妙なニュアンスまではわからないのですが、少なくとも、数ある外来種の花からwa*ika*huliが選ばれたのは、この花のたたずまいのなかに、その彼を思わせるなにかがあるからに違いありません。

 いまをさかりと咲き誇る美しさ、その花々への熱い思い。
 私の大切なwa*ika*huliの花。
 かぐわしい花が形作る愛のレイ。

 「wa*ika*huli」の文字通りの意味は「change the color」(色を変える)**。花の中心から花びらの半ばあたりまでが濃い赤色で、その外側があざやかな黄色という特徴からつけられた名前のようです。写真でみると、その小菊くらいの大きさの花に、私自身、見覚えがありました。そう、子どものころ、原っぱでけっこう目にすることがあったあの花です。タンポポやシロツメ草とは違う特別な感じが好きで、見つけるたびにちょっと得した気分だったあの花―この歌にわれている彼も、周囲から一目置かれるような、影響力のある人物なんでしょうか***……そんなことをあれこれ想像させられた『wa*ika*huli』なのでした。 


composed by Kuana Tores Kahele

*:ハワイ語の「maoli」には「true」(真の)という意味とともに、「indigenus」「native」(土着の、その土地に根ざした)という意味を持っています。
**:「wai-ka-huli」には「waiho’olu’u」(色)、「huli」(方向などを変える)という意味が含まれています。
***:花の香りは異性をひきつける魅力の比喩として登場することがよくありますが、広範囲に香りがただよう様が、その人物の影響力や存在感のたとえとして用いられることもあります。
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隙間のりりー

フラダンサー&ミュージシャンを応援するハワイ語講師。
メレの世界を深く知るためのハワイ語を、わかりやすく解説します。